「私の腕の中で」〈キトラ×リラ〉

キトラ side


前方不注意の暴走トラックが私たちの元へと突っ込んできた時、私より早く気づいたリラは、私をトラックから遠ざけようと、強く突き飛ばした。


私が反射で瞑ってしまった目を開けた時、


さっきまでいた場所は地獄絵図だった。


エンジン部分が凹んだトラック。


その近くにある大きな血溜まり。


そして、その中心にいる、







…私の後輩。




私が急いで彼女に駆け寄ると、幸いまだ意識はあったようで、ゆっくりと私の方を見る。


「キ…トラせ…ぱい、けが…………な、いですか?」


と聞いてくる。


自分の体がボロボロになってるのにも関わらず、真っ先に私の心配をする、彼女はどれだけお人好しなのだろう。


『私は大丈夫だよ……ありがとう、ごめんね』


私がそう言うと、安心したように微笑み、


「よか…た…」


そう言って、ゆっくりと目を閉じた。


ずしりと重くなる、私の腕。


それは、彼女が死んだことを表していた。



遠くから聞こえる、救急車のサイレン。




今更来ても意味が無い、手遅れだと言いたい。








私の腕の中の彼女は、もう呼吸をしていないから。

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