「さよなら」〈リラ×翠雨〉

翠雨 side


「許して」


私に向かってそう言って、リラ姉さんはふわりと笑った。


その言葉に返事をする暇も与えず、後ろ向きに落ちていく姉さん。


私に伸ばされた手を掴もうと掴もうと手を伸ばすが、あと数ミリで届かない。



グチャッ


と嫌な音がする。


恐る恐る下を見ると、大きな血溜まりの中に倒れている姉さんの姿。


下にいる人たちの悲鳴で目が覚める。



最近はずっとこの夢だ。



ほんの数週間前にあったこと。




姉さんは私の目の前で、あのビルから飛び降りた。


まだ、記憶に鮮明に残ってるし、これからも忘れられないだろう。




汗でびちゃびちゃのパジャマを脱ぎながら呟く。



『夢なら良かったのになぁ…』


懐かしい姉さんの香りが、どこからかしてきた気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る