第9話
つぎの日、学校に行ったらすぐにサユリが近よってきて、ゆうたいりだつ、の話のつづきを聞いてきたが、さすがにきのうのできごとを話したら、頭がおかしくなったとバカにされそうな気がしてなにも言わなかった。そして家から帰ったツミキは、すぐに本をひらいてみた。すると、きのうまでなにも書かれていなかったページにいつのまにか文章が書かれていた。というより、目に見えないなにものかのペンによって今まさにツミキの目の前でさらなる文章が書きたされようとしているのだった。
ツミキは自分の目をうたがい、ほほをつねってみたりしたが、それはうたがいようのない現実だった。こわくなったツミキは両手で本をとじようとした。でも、やはり目に見えない強い力が本を上から押さえつけているようで、どうしても本をとじることができない。
そうこうしているうちにその力で自分の体までおさえつけられ、またも本の中にすいこまれそうになった。ツミキはめいっぱい机の上についた両手でふんばりながら、その力にさからったが、本はいつのまにか大きな黒い口をあけている。そして机の上におかれたふでばこやノートなどをつぎつぎとその中にすいとり、電気スタンドやランドセルまであっというまにのみこんだ。そればかりか時計やベッドもタンスもすいとられ、しまいにはツミキの体もその部屋ごと本の中にのみこまれた。そしてツミキはきのうと同じようにほそいトンネルをきりもみしながらすべりおちていった。
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