記憶喪失

ぼくはハシカンの声が聞こえた方を向いた。


するとそこには大きく手を振るハシカンと、

太ったグリフィンに乗るはげたムキムキのオッサンと少し痩せたグリフィンに乗る肩幅のあるRIKAKOに雰囲気の似た髪の赤いおばさんがいた。


ハシ「大丈夫!?」


■■■■■■■■■



僕はハシカンに傷口へポーションを掛けられていた。


「ビックリしたわ。一瞬、さまよう鎧に襲われてるかと思ったわ!」


難波の傷口から流れる血は止まり、徐々にではあるが傷が塞がっていく。


(ああ!なんか気持ちいい!)


二人のやり取りを見るオッサンとゴンゾ。


「これでとりあえずは大丈夫でしょ!よかったわね。このままだったら、あと10分で死んでたわよ!」


僕はぞーっとした。


ポーションを掛け終わると、ハシカンは耳元で囁く。


「ナンバ、本当に大丈夫なの?さまよう鎧が仲間なんて?あばれたりしないの?」


その発言をきいて僕は(えっ、さまよう鎧が仲間になるって一般的じゃないのって思う。)ただ、とりあえず今は


「大丈夫だって!ゴンゾは暴れたりしないよ。」


と言っとおく。

そんな会話をよそにゴンゾはボーッとしている。

(ちなみにハシカンのゴンゾへの攻撃はノーダメでした。)


「っていうか、お前の傷はもう大丈夫なのかよ?」


「大丈夫よ。ポーションぶっかけた後にハイポーションぶっかけたから!」


そこで、ハシカンが救援として連れてきた

男女二人組の片方である、ハゲたオッサンはぼくに向かって言う。


「40年生きてきたが初めて見たぜ!さまよう鎧を仲間にする奴なんて、その上装備しちまうとはな!」


見た目通りの野太く太い声だ。

セットで着いてきたRIKAKOおばさんは輪には加わらず、せっせと料理を作っていた。多分、夫婦なのだろう。


そこで、おっさんはぼくに声を掛けた。中々でかい声で


おっさん「という訳で初めましてだな!

俺はナツパっていう、このムジュラマの森でハンターしてるおっさんだ。あそこに飯を作ってるのが妻のアルパだ。よろしくな!」


そういい手を差し出した。


(典型的な陽気なおっさんだ。っていうか自分でおっさんっていうか、、)


ただ、どっからどう見ても、いい人だとは分かった。ぼくを助けにワザワザ来てくれたというのも納得だ。


そして、ぼくはアルパと握手をした。

分厚い手だった。


「助けにきていただいてすみません!難波・大吉といいます。」


ナ「いやいな、俺は何もしてねえよ。最終的に兄ちゃんが一人で倒しちゃったわけだからな!」


ナツパは謙遜する。


(ははは、ぼくじゃなく、ゴンゾだけどね、、)


そしてぼくは、ハシカンの発言に続いてナツパの発言で確信する。


それはさまよう鎧が、仲間になる事が異常だという事に、、という訳で、思わずぼくはナツパに聞いてしまう。


「というか、話を戻すんですが、そんなに珍しいんですか?さまよう鎧を装備するのって?」


するとナツパは(えっ、今更それ聞く?)みたいな顔を一瞬する。


そして続けて「お前、なんで今更、さまよう鎧を装備するよいな奴がそんな事きいてるんだ?」と聞いてきた。


「いやっ、あのっ!」


ぼくはここで今の質問がやばかった事にきづく。

(しまった!さまよう鎧が仲間になる事がこの世界では異常だというのが普通の事なら、

なんでぼくは知らないんだという事になる!身元を疑われる!)


ぼくはその発言に上手くごまかそうと頭をフル回転させる。

しかし、中々いい言葉が出ずテンパリながら自分でも思わぬことを言ってしまう。それは

「いや、あのですね。ちょっとこの森で色々あったのか分かりませんが、、

なんか記憶が、、曖昧に、、曖昧というか、、」


すると、ナツパは目を見開き顔をぐっと近づけて言う。


「お前、まさか記憶喪失なのか??」



「、、そうですね。なんか、、そんな感じですね、、所どころ、、所どころ、なんですけど、、」


(ヤバイ!?)


思わず、そう言ってしまった自分にびっくりする。


そしてナツパがぼくの言葉にびっくりして、返答しようとしたその時。


テンナ「何よ!あんた!記憶喪失なの!

だったら記憶喪失なら記憶喪失だって、

いいなさいよ!!どおりで容量を得ない奴だなって思ってたのよ。」


ナツパに割り込んで、ハシカンが胸元をつかんで、ぼくを揺さぶってきた。


「苦しい!苦しいって」


「おいっ!止めろ!そのままだと、難波の首の骨が折れちまう!」


ナツパがハシカンを静止した。


ナ「で一体いつからのきおくがないんだよ?」


その質問にぼくは瞬時に考える。たしかにいきなり異世界に飛ばされてきたと正直に言って頭がおかしいヤバイ奴扱いされるより、

記憶喪失の方が都合がいいような気もすると、


「、、そうですね。ぼくがこの森に来るまでの事とか、、今まで自分がどうしてたとかですかね。」


(とりあえず出世や今までどうやって生きてきたかを忘れた設定にしたほうが都合がいいだろう、、正直に答えるとね、、)


「何よ!って事はほとんどの事わすれてる

じゃない!でもゴンゾの事はどうなの?覚えてたんでしょ。自分の名前も覚えてたし、、」


「名前は何故か覚えてたんだよね、、あと、ゴンゾは記憶喪失になったあとから、仲良くなったから、、」


ナツパ「ちなみに今自分の中での一番古い記憶はなんなんだ?」


「いやあ、今日ですかね、、今日の昼ぐらいからの記憶しか、、」


すると再びテンナが両腕を持って激しくゆらした。


「だったら、さっき さまよう鎧 は安全だって、発言はなんだったのよ!

今日だけ見ての判断じゃない!」


「いやいやごんぞは大丈夫なんだよ。分かるんだって。なんとなく。」


ハシカンの方がよっぽど安全じゃない、

そう思った。


「とにかくだ、、まず記憶をとりもどさないとな、、」


そういうと、ぼくの服装をじっと見ながら


「おいっテンナ、このニイちゃんのかっこ、どこかで見たことあるか、、」


「見たことある訳ないじゃない、、初めて見たわ、、こんなかっこ、、」


(そりゃ、そうだ、、この世界にTシャツも

ジーパンもないんだから、、)


「そうか、、格好さえ分かれば、どこ出身か分かって。何か手がかりの一つでも、

分かると思ったんだけどな、、」


(ハハハッ、)苦笑い


そんな時、後ろで料理をしていたアルパが

大きな声を上げた。


「とにかく記憶喪失になってしまったもんは仕方ないし、とりあえず今悩んでも仕方がない!とにかく、こういう時はまずメシを食おう。」


そういうと棒に刺さって焼かれたドでかい鳥を持ってるアルパが笑った。












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