VS緑鎧

僕がしゃがんだ事で、僕が受けるはずだった雷撃を受けてハシカンは蹲っていた。


「、、、ッ!!」


大丈夫?と聞こうとした難波だが、ハシカンの様子を見て聞くのを辞めた。


(大丈夫、、な訳あるはずないよなぁ)


なぜならハシカンの左の腹部は命中した雷撃によって、大きく火傷していた。

皮膚も焼け爛れて、肉の焼けた時特有の香ばしい匂いがあたりに充満していた。

多分だが内蔵も損傷してるだろう。


(こんな、嫌な香ばしい匂いは嫌だなぁ)


もちろんクリープもハシカンが心配なのだろう。大きな声で鳴いている。


僕は急いでハシカンを抱き抱えた。

それと同時に、クリープが近くまで駆け寄る。


「悪いが安全な所まで連れて言ってくれ。あと出来たら救援もよろしく。」


そう言い、ぼくはハシカンをクリープの背中に乗せた。


その間にも、ハシカンに雷撃を喰らわした犯人は森を抜けて、ゆっくり鎧独特の足音を立てながら僕たちに向かってきていた。


「キュー。」

クリープがうなずいた。


「ちょっと待って!」


息絶え絶えだえになりながらハシカンが言う。


「大丈夫か?体」


そういうと患部にハシカンは胸元から小瓶に入った水色の蓋を開け、中の液体をかけた。

その瞬間、ゆっくりとではあるが火傷の跡が薄くなっていく。


(多分、ポーション的なやつだろう)


「これでとにかく死にはしないわ。すぐには、動けないけど。それより難波、残ってあいつと闘うの?」


「ああっ、。」


「そう分かった。でも多分あいつ最近、この森で噂になってるさまよう鎧よ!電気系の緑の鎧で、森に来てる人を襲ってるって!」


難波に向かって雷撃を撃ってきたクソ野郎、それは緑のさまよう鎧(緑鎧)だった。


(ああ、もう被害がでてんのね!

という事は、どっちにしろいつかはどうにかしなきゃいけない訳だし、

何よりゴンゾがいるから大丈夫でしょ。

まあっ、でも一応、聞いとこ。)


「この世界でレベル100以上って凄いの?」


「100以上なんて凄いなんてもんじゃ無いわ!

SSS級クラスの超実力者よこの世界に10人ぐらいしかいないわよ」


何、当たり前みたいな事聞いてんの?みたいな顔をするハシカン!


それを聴くと僕はとたんに勇気が湧いてきた。

(なら、レベル100以上のゴンゾに任せたら緑鎧に勝てるでしょ!)

そして自信満々に言った。


「大丈夫だって!僕に任せて!」


僕は他人まかせでありながら、他人の手柄を自分の手柄にしたがるという中々クズっぽい所を持っていた。


、、すみません。自覚してます。


「なんか、、いきなり自信満々になって気持ち悪いわ、、とにかく、すぐ救援を呼んでくるから!無理しないようにね!」


ハシカンが軽い捨て台詞を吐いて

クリープは大きな翼を広げ飛びたった。


(あのっ、女!!)


ただ捨て台詞を吐けるハシカンに少しホッとしていた。


そして、ぼくは振り返り、後方で立っている緑鎧と向かい合った。


(バチバチ)

湖のほとりをおおきな電気音が響きわたった。


■■■■■■■■■■■■■


パチパチと電気音がする、その緑のさまよう鎧はゴンゾと同じく顔がなかった。


ただゴンゾのように全身が黒ではなく、緑だった。


ただ、ゴンゾの様に全身ではなく一部分、

主に二の腕、太腿の部分はシルバーだった。


そして緑の部分はとても美しく、まるでメタリックの様にキラキラ光っていた。

少し汚れていたり、傷ついたりしてる部分もあり、右の脇腹の部分も一分かけていたが、

動きを見る限り、なんの支障もなかった。


右手にはずっと愛用してきたであろう大きなナイフを持っており実に緑鎧に馴染んでいた。その雰囲気から緑鎧のナイフの腕前は相当な物だと分かった。



(うーむ、敵とはいえ実に絵になる。正直、プラモで出てたら買ってたかもしれない。

今から倒そうとする相手に持つ感情じゃ絶対ないけど、、)

オークとの戦いを経て難波は落ち着いていた。


「ゴンゾ、この緑の鎧を倒せ!」

難波が叫んだ。目の前にYESという文字が浮かんできて、その後、身体強化ONという文字が浮かんだ。


その瞬間、体から湯気があがる。

身体強化が発動したのが分かった。体が熱い!

そしてゴンゾに統率されているぼくの体は剣を抜いた。


(ファイアソードON!)


剣が炎に包まれると、その炎は高く燃え上がった。実に力強い炎だった。


その瞬間、ゴンゾは緑鎧に切り掛かった。


しかし元々素早さも高く、そして装備がナイフなので身軽だからなのであろう。

緑鎧はその後のゴンゾのファイアーソードの猛攻も華麗な身のこなしで難なくさけた。

そして反撃のチャンスを伺っていた。


ただ、そこは流石のゴンゾだった、緑鎧に攻撃を避けられながらも相手の反撃はさせない。


しかも、それだけではなかった。ゴンゾは緑鎧のスピードに慣れたのか、

わずかな時間で攻撃を修正し、徐々にだがファイアーソードと緑鎧との距離は近づけていった。


そして緑鎧は余裕が徐々になくなっていき、

あるタイミングでゴンゾの剣をナイフで受けるようになる。


ただ重量のあるゴンゾの剣に対し、大きいとは言え剣ほど重量のないナイフである。明らかに緑鎧は力負けして後方に下がっていく。


(いける!このままでいけば勝てる!)


そう思った次の瞬間、緑鎧のナイフが剣に弾かれ空を飛んだ。


(よしっ今だ!)


あとはノーガードになった緑鎧にとどめの一撃をさすだけ、、のはずだった。


ただ、ここで異変が起きる。緑鎧の体の周りを電気が包み、それが突然濃くなったと同時にぼくをのみこんだのだ!


そして、次の瞬間!


(バリバリバリバリバリバババッ!)

とてつない電気音が鼓膜になり響いた。


その瞬間、あるゲームのキャラクターが浮かんでいた。それはストリートファイターのブランカだった。


(これは緑鎧による、、、放電だ!)


その瞬間、ぼくの体は感電する。


(ギャアアァアアアアァァ!)

あまりの激痛で悲鳴にならない悲鳴を僕はあける。

表情は楳図かずおが描いたキャラクターの恐怖シーンみたいだった。


そして、やばい事はまだ続いていた。

それはゴンゾが動かないのだ。多分だが、ゴンゾは感電して体が麻痺してるのかもしれない。


そしてゴンゾが動けないという事、それはすなわち大ピンチという事だ。


(ヤバイ反撃される、、)


そしてぼくは最悪の光景をモノにする。

それは飛ばされて地面に落ちたはずの緑鎧のナイフがいつの間にか緑鎧の右手に戻っていたのだ、、そしてぼくは直感する。


(このままいけば、ぼくは首真っ二つだ!)


緑鎧がもし僕を使っ攻撃するなら鎧ではなく

剥き出しの部分、つまり首をねらうだろう。


つまり本日二度目の首真っ二つピンチだった。

一度目はオークから、ただ一度目はギリギリでゴンゾに助けて貰った。

ただ二回目は厳しそうだ。何故なら頼みのゴンゾが電気麻痺で動けないのだ。

という事で自分でなんとか、しなければならない。

今度ばかりは目を閉じていては助からない。

ただ可能性はある。

なぜならゴンゾに体の統制を取られても首から上はまだ自由に動くからだ。

そして緑鎧はゴンゾの首に向かって、ナイフを振り下ろした。


(まるでアメリカ映画のシルエットで表現した時のナイフの刺し方だ!)


まるでアメリカ映画のシルエットで表現した時のナイフの刺し方だった。


(ヒッチコックのサイコみたいな刺され方で死んでたまるか!)


と心の中で難波は叫んだ。


ぼくは精一杯を首をひねる。今度はちゃんと目をつぶらなかった。


結果、難波の首は皮膚を若干、切られるぐらいのダメージで抑えられた。


それと同時にゴンゾも麻痺がとける。

そしてバックステップで緑鎧との距離を一回ゴンゾは取った。


そしてぼくはホッとしていた。血が少し出てるとは言え、首を真っ二つにされなかった事に。


ただホッとしていたつかの間、、すぐに緑鎧の雷撃が飛んでくる。


ゴンゾはその雷撃を剣を持ってない手で出したファイアーシールドで防御する。


ちなみにファイアーシールドは円形の大きな四角い炎の壁でぼくの体をすっぽり覆えるぐらいの大きさだ。


そして、すぐにファイアーボールで反撃する。


ファイアーボールという技はファイヤーシールドやファイアーソードの様に名前そのままの技だ。

人の上半身ぐらいの大きさの火の玉が敵に飛んでいく。


ただ少し、ファイアーソードやシールドと比べ、発動が遅いのが気になった。


そのせいだろうか、緑鎧はわりかし余裕を持ってファイアーボールを避けると、隙を狙って近接戦に持ち込もうとゴンゾとの距離を詰めていった。


ただゴンゾは放電を喰らうのがいやなので接近されるのを嫌って、距離を取ろうとする。ただそこに再び雷撃が来てファイアーシールド、というループを何回も繰り返した。


(近づいたら放電、はなれたら雷撃、これはややこしいな、、)


そして徐々にだがぼくは焦っていた。その原因は首から溢れて滴る真っ赤な血だった。

切られた時とは違い、大分、出血していた。


(やばい!思ってたより深かったか!

もしかしたら神経を傷つけてるのかも知れない!)


もし思った事が事実なら持久戦にもちこまれるのはヤバかった。

これだと、どこかのタイミングでぼくは出血多量で意識を失うだろう。


ただ打開策がない。


(くそ!救援はまだ来ないのか!!)


しかし救援を待ってては遅いと僕は気づいていた。


(このままじゃ、ダメだ!自分でなんとかしないと!)


そして僕は自分が気づかない内に戦闘中だというのに目を閉じていた。

これは物を考える時はいつも僕は顔に手をやるのだが戦闘中なのでそれができない。つまり顔に手をやる代わりの代用行為だった。


(なんとかして攻撃を当てないと、、ただファイアーソードは放電でダメだし、ファイアーボールは当たらない。とにかく今度緑鎧の動きを止める事が先決だ!)


そしてぼくは目を開けゴンゾに伝える。


(ゴンゾ、今から戦闘の指示は僕が出す。だから、ぼくの言う通りにしてくれ!)


大きく目の前にYESと出た。


(よしっ、それじゃファイアーシールドを使わなくても雷撃を避けれる所まで距離を取れ!)


ゴンゾは一時的にファイアーシールドを解除し、すばやい動きで緑鎧との距離を取った。これだけ遠いとお互いのファイアーボールや雷撃は一応届くが、まず避けられる距離だった。


そして難波はゴンゾに解除していた、ファイアーソードを再びONにさせた。

剣に炎が宿った。しかし、この距離だと緑鎧にはもちろん届かない。


(ああ、届かないさ、、このままならな!)


難波は叫ぶ!

「すべての力をこのファイヤーソードに込めろ!この森の木を越えるぐらい全力で!」


その瞬間にファイヤーソードを包む炎は何倍も大きくなり、そして剣から発する火柱は森を抜けるぐらい高くなった。


そして、この火柱の高さなら十分ゴンゾからの距離でも緑鎧に届くのは明白だった。


(よっしゃ!思ったとおりだ!じゃあゴンゾ!このファイアーソードで切りつけろ!

ただ縦じゃない!水平だ!)


そしてゴンゾはファイアーソードで緑鎧に対して水平で切りつける。


大きな扇型を描いて、ファイアーソードは緑鎧は向かっていく。


そして緑鎧はこの戦いで初めて、大きくジャンプしてファイアーソードで避けた。

でなければ、この攻撃を避けきれなかったからだ。


そして、これが難波の狙いだった。

難波は大オークの戦いの時に学んだ事があった。


「それは人は空中では身動きが取れないという事だ!もちろんそれは鎧でもな!」


そして空中に固定された緑鎧は、真っ黒な火球、ファイアーボールに飲み込まれた。

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