②
難波は森の中にある川のほとりでうなだれていた。
それを尻目に川の小脇に着陸したグリフォンから荷物の大きな袋と凍らした塊を下ろすハシカン。
「お疲れ様、クリープ。背中冷たかったでしょ」
そういうと、グリフォンのクリープの背中をなでた。グリフォンも気持ちよさそうに背中をなでられている。
一通りなでた後、ハシカンはうなだれている難波に上から目線で言う。
「なさけないわね。男でしょ。」
(くそー今の時代、その発言をセクハラなんだぞ)
ただ立場上、そんな事言えるわけもなく
反論と吐き気をぐっと堪える。
もちろんハシカンの腰に回した手の感触なんて堪能してる余裕などなかった。
そんな僕を尻目にグリフォンは川で呑気に水を飲んでいた。
「そういえばハシカン、そのペット、クリープっていうの?」
「ペットじゃないわ。相棒よ!グリフォンのクリープっ。私が働き始めた時に飼い始めたから、かれこれ4年の付き合いね。」
「ハシカンって今何歳?」
「18よ。そういえばあんた、、年齢どころか名前すらまだ聴いてなかったわね。」
(18か、、って事は働きだしたのは14からって事か、、)
20にもなって、なんか自分が恥ずかしくなった。
「ぼくは難波大吉、20だよ。」
「へー、私より年上じゃない!じゃあさっそくだけど難波、そこの袋からフライパンと火打ち石出してくれない?」
そう言って袋を指差す。
(、、いやっ、ぼくさっきまで鳥酔いしてたんすけど)
「何、なんか文句あんの?森から出してあげないわよ?」
「いえっ、文句ないです。」
(駄目だ!完全にマウントを取られてる!、、ただ、今はしかたがないか、、)
ぼくは自分の立場を完全に理解した。
そして、ここで実はハシカンの後ろに回った時から気になってた氷の塊について聞いてみた。
「っていうか、ハシカンの後ろに回った時から疑問に思ってたけど、その氷の塊ってオークだよね。」
「そうよ。今日はオークしか取れなかったけど、日によったらオバケキノコとか、スライムとかも取ってるわ。
あと、一応言っとくけど、もちろん私が1人で全部取った奴だからね。
私は18歳の若さで個人でやってる食料ハンターなんだから。狩と運搬・売買すべてしてるんだから。」
ハシカンが自慢気に言った。
(なるほど、よく分からないが、とにかくこの世界で個人でやってる食料ハンターは凄いんだな。)
そして聞きたいことは山ほどあったが、とりあえず一番聞きたい事を聞いた。
「運搬って、こういう荷物や食料、アイテムみたいなでかい物でもそのまま運んでるの?」
「そのまま運ぶ以外にどの方法があるのよ。
っていうかあそこに飛んでるやつ全員、そうして運んでるわ。」
そういいながらハシカンは空を指差す。
難波はその時、初めて人を乗せたグリフォン達が空にポツポツと飛んでるのに気づいた。
「ねえっ、もしかしてだけど、、この世界には簡単にアイテムや物を保存できたり携帯できる物はないの?例えば何でも入る四次元ポケット的な奴とか?」
「何よ、四次元ポケット的な奴って?」
「だから例えば、この大きい荷物やモンスターの大きさや重さを完全に0にして、どこへでも簡単に運べる、そんな袋だよ。」
「そんな便利なもん、あったらとっくに使ってるわよ!」
(なるほど、、つまりこの世界はアイテムや物をRPGやゲームの様に簡単に携帯・保存できないんだ。
スターテス表示はあるけど、、だから、この森で取った獲物は腐らないように凍らせて空を飛べるモンスターに運ばせてるんだ、、馬だと時間がかかり過ぎるって事か、、)
「、、、なんか顔に手を当てて、色々考えるのは構わないけど、とりあえず袋から頼んだ奴出してくれる?」
「ああっ、ごめん!」
急いで袋からフライパンと火の魔法石を取り出す為にしゃがんだその時、、
(バチバチバチ!)
ぼくの上からまるでスタンガンのような音が響いた。
そして次の瞬間、ぼくの上を通過していった雷撃はハシカンの脇腹を貫通した。
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