第23節 -閉ざされた心-
午後6時。車は間もなく高速道路を抜けブダペスト市内へと入る。
先程の二人の会話を黙って聞いていたアザミはバックミラーで二人の様子を窺う。言い合いが終わってからというもの、双方とも力無くずっと車外を見つめたままだ。
フロリアンはマリアに突き放された事がよほど堪えたのだろう。
第三者視点から見て彼がマリアに特別な想いを抱いていた事はよく分かる。それが人間が言う所の恋心と言うものなのかまでは知らないが。
彼女に嫌われてしまったかもしれないという不安が、今の彼の精神に大きな影響を及ぼしているように見える。
しかし、本当に深刻なのはマリアの方だ。赤の他人の事でこんなに気落ちしている彼女は長年寄り添ってきた自分ですら見たことが無い。
ライアーを始末した後、自分が公園に戻ってきた時にマリアが言ったことを思い出す。
【彼ともお別れだ。もう必要が無い。】
その時に感じた不安が的中した。
結局マリアは自身の本心を抑えきる事が出来なかったらしい。口ではあのように突き放しておきながら、本当は離れたくないという想いが未だに心の中で葛藤しているといったところだろうか。
立場から来る考えによってその決断を受け入れようとすればするほど、彼女の心は本当は嫌だという気持ちに支配され音を立てて軋む。
人の魂の色が見える自分には分かる。今の彼女の魂は両極端な二つの色がせめぎ合っている状態だ。
ただ素直になれば良いものを…
アザミはマリアがフロリアンを強く拒絶したのは本心を見抜かれそうになった為に、とっさにとった行動だと理解していた。
いや、正確に言えば “見抜かれそうにになった” ではない。 “見抜かれた” のだ。
未来を視通し、他人の行く末すら知り得る目を持つ彼女にとって、自分の心を他の誰かに見通される事ほど恐ろしい事は無いだろう。
未だかつて、そこまで彼女の心の琴線に触れた人間など存在しなかった。およそ千年の間にただの一人も。彼女が徹底的に人付き合いに対して予防線を敷いてきた事も一因ではある。
そもそも今回のように彼女が自らの意思で誰かと関わりあおうとすること自体が奇跡のようなものだったのだ。
その事をフロリアンには最初の時点で伝えてはいるが、彼女の行動がどれほど特殊な事だったのかは理解していないに違いなかった。
「お二人とも。間もなく市街へ到着します。」
アザミの声掛けに最初は二人とも無反応であったが、失礼だと感じたのかフロリアンがすぐに返事をした。
「ありがとうございます。」
「宿泊先のホテルまでお送りします。」気にすることなくアザミは停車位置をフロリアンに伝えた。
「分かりました。僕はそこで失礼します。」
フロリアンがそう言った時、それまで黙り込んでいたマリアが制止する。
「待ち給え。君、そのコートを着たまま外を出歩くつもりかい?」
フロリアンは自身のコートを見る。暗がりでよく分からないが、ところどころに血の痕がしっかりと残っている。
イルミネーションや街灯が照らす中をこのまま歩けば確かに大惨事であろう。周囲の目線と警察からの呼び止めは覚悟しなければならない。
「ホテルまで少しの間だから脱いでいくよ。なんだ、やっぱりマリーだってお人好しじゃないか。」
「誰かさんの悪い癖が移ってしまったかな。」マリアが返事をする。相変わらず視線は合わせようとしない。それに対してフロリアンは穏やかに返事をした。
「“たった二日間一緒にいただけで” かい?」
「私に対する当てつけのつもりかな?」
「まさか、とんでもない。僕は嬉しいんだよ。」
フロリアンは努めて冷静に話をした。そして嬉しいという感情は心からのものであった。
マリアは自分と二度と口をきいてくれないかもしれないと思っていた事と、彼女の中で自分との二日間がただの慣れ合いの関係ではないと言ってくれた気がしたからだ。
車はゆっくりと市街地を走っていく。そして聖イシュトヴァーン大聖堂の付近を通り抜け、その近くにあるフロリアンが宿泊するホテルの前で停車した。
「到着しました。」アザミが言う。
「ありがとうございました。その、何と言えば良いのか…」フロリアンが礼を言う。
そして言葉にならない複雑な思いをなんとか口にしてみようと思ったが、やはり言葉にならない。
「貴方を巻き込んだ事に対する非礼はわたくしからお詫び申し上げます。」
「いえ、そういう事では無いんです。先程も言いましたが、僕は自分の意思で貴方がたと行動を共にしたのですから謝らないでください。ただ、これで終わるのは嫌だなって思ったんです。ただ、それだけです。すみません。では失礼します。」フロリアンは一番伝えたいと思った事だけを伝えると車から降りた。
「はい、お気をつけて。」アザミが降り際に声を掛ける。
フロリアンがドアを閉めようとした時、ふいにマリアが呼び止めた。
「フロリアン。」
フロリアンはすぐに振り返る。一瞬だけマリアと視線が合ったが、すぐに逸らされてしまった。
「いや、何でもないんだ。気を付けて。おやすみ。」
「あぁ、マリーも。おやすみ。」今できる精一杯の笑顔でマリアに挨拶をして、フロリアンは歩き始めた。
*
車のドアが閉まる。彼は脱いだコートを片手に路地へと歩いて行った。
その後ろ姿を眺めながらマリアは無意識に自分が彼に手を伸ばしている事に気付くとすぐに手を胸に当てた。
「マリー?よろしかったのですか。あのように突き放す事を言って。」彼に手を伸ばしたマリアをバックミラー越しに見たアザミが声を掛けた。
「言ったはずだよ。彼とはお別れしなければならない。目的が達せられた今、私達には彼が必要なくなったんだ。私のような女がこれ以上彼の傍にいてはいけない。君もわかるだろう。彼と私達とは、そもそも住んでいる世界が違う。それに、彼に話した事は嘘ではない。」
「事実を全て話すことは出来ないとしても、その優しさは彼を傷付けますよ。彼に言った事は確かに嘘ではありませんが、彼の言う通り真実でもありませんでした。貴女は自分の心に嘘をついている。」
「アザミ、君までそんな事を…」マリアがそこまで言いかけた時、アザミは言葉を覆い被せて遮った。
「今しがた、貴女が彼との別れ際に “さようなら” ではなく “おやすみ” と言ったのは、まだ彼と話がしたいからでしょう?本当に彼を必要としないのであれば、彼の言う通り何も言わずに放っておけば良かったのです。使い終わったティッシュをゴミ箱に投げ入れる時に挨拶など不要なのと同じように、ただ黙って捨ててしまえば良かった。貴女は未来という真実を見通す分、嘘をつくのがとても下手ですから。いえ、嘘がつけない。下手な嘘をつくより少し素直になってみては?」
「随分な言い様だ。君のそういうずけずけと人の傷を抉るような素直さは嫌いではないよ。見習うべきなのかもしれないが、私には立場というものがあるからね。自分の感情に流されて最終的な目的を見失うわけにはいかない。それと、君の方が彼に酷いことを言っていないかい?」
「わたくしの理は報復ですから。こういう時に加減が効かないのです。何も常に素直になれという事ではありません。彼の前だけで十分です。わたくし達が目指す未来にそれは不要なものとは言い切れないと思います。」
「つまり彼の前で “ただの女になれ” と?この私が?」
「わたくし以外にも、ありのままの自分を表現できる相手というものが貴女にも必要な時期かもしれません。時には立場を忘れる時間も必要でしょう。ただありのままに思った事を伝えれば良いのです。そうすれば彼は貴女の言葉を受け止めてくださいます。」
それが出来れば苦労はしない。とマリアは思った。
何もかもかなぐり捨てて、自身の抱く感情に忠実に生きる事が出来る人間であればそうするのだろうが、自分という存在には許されない事だと思っている。
嫉妬、悲嘆、絶望。あの日から今まで自身の心を支配してきたのはそういった感情である。私が忠実に従うべき感情とはそう言ったものから生まれるものに限定すべきだ。
私はアザミの言う “それ” を求めてはならない。
それともう一つ。これは自身の心の問題だ。
確かにアザミの言う通り、自分が素直な気持ちを伝えたとして、彼がその言葉を拒絶するとは到底思えない。しかし、過去の経験と記憶が自分の本心を表現する事を拒んでいる。
自身の力では彼に関する未来を視通すことは出来ない。素直に話した先に待つものが拒絶では無いという確証はない。
絶対とは言えない、見えない未来というものがこれほど恐ろしいものだと感じたのは初めてだった。
マリアとアザミの間には沈黙が訪れている。
アザミにはマリアが何を考えているのか、今なら手に取るように分かる気がした。立場と言うものに縛られ、あるべき自身の姿に囚われている。
きっとこうすべきだ、こうあるべきだという概念に固執しているのだろう。しかしそれは決して自分自身の為にはならないというのに。
千年に渡る呪いにも等しい呪縛を解き放つ機会などそう訪れるものではない。言葉通り、今回の状況は【千載一遇】の好機だ。
この機会を見逃せば、彼女はこれから続く果てしない時間の中で同じ傷に幾度となく苛まれる事になる。その事を分かっていながら一歩が踏み出せないのは例の苦い経験からか。
いずれにせよ、最終的に決断するのは彼女だ。後悔するような判断はしてほしくないと願うが、恐らく自分の言葉だけでは無理だろう。きっかけが足りない。あと一歩。 “彼の言葉” が必要だ。
長い沈黙の後にマリアが再び口を開く。公園での後始末の件についてだった。
「その話はひとまず置いておこう。ところで、あの男の死体の偽装は完璧かな?」
「もちろん。総大司教様ほどうまくは出来ませんが、今の科学で真偽を見破るのは不可能でしょう。銃を手に取るものは銃によって倒れるべきです。」
その言葉にリュスケで出会った信徒の姿をマリアは浮かべた。さらにアザミの手によって事の顛末の完全なる隠蔽と作り替えが完了している事も確認出来た。
「十分だよ。余計な手間を取らせたね。」
「いいえ。私自身の行いの尻拭いをしたまでです。」
「そうか。それと、夕方に彼らに送ったメールに返事はあったかな?」
「はい。【分かった】とだけ。」マリアの質問にアザミは必要な事だけを答えた。
「結構。待ち合わせの指定場所も彼らなら迷う事はないはずだ。高速で廻る観覧車というのも悪くはなさそうだろう?」
未来視での結果を見るに、午後7時をもって国連総会の二日目の日程は終了するはずだ。大きな波乱も無く、淡々と最初からの予定調和通りに議会は進行されていることだろう。
「約束の時間までしばらくありますが、どうされますか?夕食にいたしましょうか。」
「とてもそういう気分にはなれないな。今の私には優雅な食事を囲むより、自棄酒を呷る姿の方がお似合いだ。度数の強い安酒あたりが似つかわしい。」
「それならそれでお付き合いしますが、まずは一度ホテルへ戻りましょう。色合い的にほとんど目立たないとは言え、着替えた方が良いでしょうから。」
「…あぁ、そうだね。」
夕方の事を思い出して言葉に詰まる。ドレスに染み付いた血にあの子犬の温もりがまだ感じられるようだった。
個人としてはこのままでいたいとは思うが、道義的にはアザミの言う通りだろう。
二人はそのまま宿泊先のホテルへと一度戻る事に決めた。
* * *
車を降りたフロリアンはすぐ近くのパン屋で手頃なパンを購入すると真っすぐにホテルの部屋へと戻った。
クリスマスマーケットで夕食を調達しようとも思ったが、正直そんな気分ではなかった。
とても長い一日のようでもあり、とても短い一日のように感じた。
彼女は自分を利用していただけだと言った事を思い出す。もう自分は必要無いとも。
当然、悲しくないと言えば嘘になる。その言葉が本心からのものであれば、心が張り裂けそうだ。共に過ごした時間の全てが、楽しかった思い出の全てが偽りだったのだろうか。
マリアの楽しそうな笑顔も、アザミが穏やかな表情で写真撮影していた事もただの演技だったのか。
フロリアンは部屋に戻ると明かりもつけず、血痕が見えないように丸めたコートと荷物を置いてすぐにベッドに横になった。
帰りに購入したパンの良い香りが漂っているが、空腹は感じない。
外からはマーケットとクリスマスの賑やかな様子が伝わってくるが、今の自分の心はまるで反対の情景を描いている。
仰向けに寝転がり、目を腕で覆う。昨日の朝、彼女に出会った時の事から先ほどまでの出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。
「マリア…」
ふいに彼女の名前が口からこぼれる。どうしても昨日から今日までの全てが嘘だとは思えなかった。思いたくなかった。
フロリアンはスマートデバイスからマリアの番号を呼び出す。電話を掛けようとしたが最後の一押しが出来ない。
嫌われてしまったかもしれない。そして彼女達にとっての目的が達成された以上、これ以上関わらない為に着信拒否にされた可能性だって有り得る。ここで最後の一押しをしてそれを知るのが怖かった。
さようならは言わなかったが、もう二度と会えないのではないかと思うと胸が苦しい。
悩んだ結果、自分の気持ちを簡潔にまとめてメッセージを送る事にした。
文章を入力し終えて送信をする。このメッセージが彼女に届くかどうかは分からない。それでも、何もせずにはいられなかった。
メッセージを送信し終わり、そっと目を閉じる。
やはり疲れていたのだろう。強烈な睡魔に襲われたフロリアンはすぐに眠りへと堕ちていった。
* * *
午後7時。国際会議場での総会は終わりへと近づいていた。
世界各国からの追及の声はレオナルド達が予想していたよりも圧倒的に少なく、むしろ質疑の中では今回の機構の決定に対する好意的な意見の表明が相次いだ。
良い意味での想定外と言えなくも無いが、何か裏があるのではないかと勘繰ってしまいたくなるほどだ。
そしてたった今、議長の宣言によって本日の総会は終了となった。翌日に行われる決議の結果を持って今回の特別総会は幕を下ろすことになる。決議は明日の正午からの予定だ。
「こう言っては何だが、拍子抜けという気がしないでもないな。」
「はい。」レオナルドの感想にフランクリンは短く返事をした。
二人は会議場を後にして外で待機している送迎用の車へと向かう。
「この後はどうなさいますか?」
「彼女達との約束まではまだ時間がある。ホテルへ戻って資料を置いたら夕食にしよう。」
「分かりました。彼女達は例の件について何か話があるのでしょうか。」
「そう考えるのが自然だな。セントラルから報告は?」
「新しく解析されたデータがいくつか。しかし現状で画像から導き出せるデータについては限界との事です。」
「上出来だ。ルーカスを筆頭にチームの皆はよくやってくれた。」
「アメルハウザー准尉の技量は素晴らしいものだと私も思います。彼の知識と技術があったからこそ、機構のシステムは今のような発展を遂げる事が出来ました。」
セントラル内でマイスターと呼ばれる素晴らしき才能に惜しみない賛辞を二人は贈る。ルーカスは機構が基幹システムとして据えているプロヴィデンスの開発者の一人である。
次にレオナルドはフランクリンに、セントラルで今回のデータ解析に携わったメンバーへ礼のメッセージを打電するように命じた。
「彼と、彼らに礼のメッセージを送っておいてくれ。」
「承知しました。」
その後、二人は駐車場に到着すると送迎用の車の後部座席へ乗り込み国際会議場を後にした。
* * *
同時刻。ホテルの一室でマリアは軽くシャワーを浴びていた。例によって外ではアザミがふわふわのバスタオルを持って待機している。
アザミは彼女がシャワーから戻るのを待っていると、部屋の中から微かにデバイスにメッセージの到着を知らせる着信が聞こえた。マリアのデバイスからだ。
おそらく彼だろう。アザミはそう直感した。
そう考えている内にマリアがシャワーから戻ってきた。すぐに用意していたバスタオルでマリアを包む。いつもとは違って表情は虚ろなままだ。
「マリー。デバイスにメッセージの着信があるようです。」
それ以上は言わない。言わなくても彼女には伝わるはずだ。
「ありがとう。後で確認しよう。」
誰からの着信なのかを悟ったマリアはすぐにではなく後程確認すると言う。この後の予定を考えれば、正しい判断だろう。
午後9時から機構の二人と会う約束をしている。その時は少女らしいマリアとしてではなく、国際連盟 機密保安局の局長としての立場で赴かなければならない。
精神に影響を与える可能性のあるものを今見るべきではないということであろう。
アザミはマリアをドレッサーに連れて行き、いつものように髪を梳かしながら乾かす。
ドレッサーに上には彼女用に淹れておいた温かいミルクティーが用意してあり、マリアはそれを手に取るとゆっくりと一口飲んだ。
ほっとした溜め息をつきながら、ただ一言彼女は言った。
「温かいね。とても。」
静寂が流れる。部屋の中には髪を乾かすドライヤーの音だけが響く。マリアはもう一口ミルクティーを飲むとアザミに質問をした。
「アザミ、今日リュスケの教会で出会った彼女をどう思う。」
ロザリア。ローマカトリック教会の総本山であるヴァチカン教皇庁に在籍するパトリアルクス、グランド・ビショップ。法王や枢機卿を除く司教の中において最高の権限と裁治権を有する総大司教の地位に就く女性だ。
「今日という日に…あの場所で彼女と出会うという事は端的に言って “不自然” かと。」
12月25日。クリスマスという日である事や、その身に与えられた役職を考えると、彼女が火急の用事も無くサンピエトロ寺院から離れているという事は不自然と判断するほか無い。
「私もそう思っている。わざわざ理由を尋ねるような真似もしなかったが、彼女がここに訪れる理由というものには皆目見当がつかない。」アザミの答えにマリアは同意した。
「特別な事情でもあったのでしょうか。」
「さて、彼女の考える事や行動は私には分からないからね。」
「やはり彼女に未来視は通じませんか?」アザミはマリアに何度も問うてきた事を尋ねる。
「無論。彼女の力が私に通用しないのと同じように、私の力も彼女には通用しない。何年、何十年、何百年経ってもそこは変わらないらしい。一度死から蘇ったに等しい私が手にした力は、いわば現世を生きる人間が持ち得る力ではない。生命の秩序を監督し、魂の救済を司り、生死に対する最高の権能を持つ彼女はこの地球上において例外中の例外もいいところだ。遠い未来を視通すどころか、一秒後に何をするのかすらも分からないよ。」
そして一通り話すと溜め息をついて話を続けた。
「どうして此処にいたのかという理由については棚上げするしかないが、彼女の動向については少し調べておいて欲しい。私の予感が正しければ、今は彼女もまたこのブダペストの地にいるはずだ。お願い出来るかな?」
「もちろん。相手が相手ですので出来る事は限られますが。」
「構わないよ。気付かれてへそを曲げられては機密文書館への立ち入りが未来永劫禁止されかねない。」
さらにマリアは一区切りしてこう付け加えた。
「それに、彼女は神と呼ばれていた君を心から敬い愛しているだろうけれど、それと同時に悪魔となった君を心から憎み、殺してやりたいと思っているだろうからね。ほどほどにしないと本気で何をしでかすか分からない。今日も去り際によろしく伝えておいてくれなどと言われたよ。」
「まぁ、人間世界の総大司教様にお目を掛け続けて頂けるとは光栄の極みですね。」アザミは事もなげに笑う。
まるで彼女と殺し合う瞬間が訪れるのを楽しみにしているかのようだ。
「気を付け給えよ。…本当に。」苦笑気味にマリアは答えた。
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