第4話 楽しい思い出
昔のことを思い出す。
あれはまだ付き合ったばかりの頃。
お互いまだ距離感がつかめず一緒に帰るときですら少し距離があった。
話そうにも話題がなく家に着くまで一言も話さない日もあった。
それでも気づけばあなたは私の歩幅に合わせてくれていて、気づけば車道側を歩いてくれていて、気づけば手にはあなたの温もりがあった。
デートの時も、エスカレーターでは必ず後ろに着いてくれて、スカートの日屈むような体勢になった時はそっとスカートを抑えてくれて、人が多い場所でははぐれないようにと腰に手を回してエスコートしてくれて、荷物は絶対持ってくれて、雨の日水溜まりがあれば必ず手を差し出してくれて。
本当に優しい人だった。
でも1度だけ別れたことがあって、でもその時は必死に追いかけてくれてやり直すことになった。
あの時、気づいたことがある。
自分で思ったより私は彼のことを好きになっていた。
別れて復縁するまでの数日はとても寂しかった。
あなたが追いかけてくれなかったらきっと私は毎日泣いていた。
彼はそれも分かっていたのかもしれない。
本当に嬉しくて、私はもっともっと彼を好きになっていた。
高校の卒業式の日、彼と一緒に教会に行き、結婚式ごっこなんて言って腕を組んでゆっくり歩いた。
「俺、大学卒業してちゃんと働いてお金溜まったらプロポーズするから、覚悟しておいて。」
なんて言って私の指にそっと指輪を嵌めてくれた。
2人で叶えたいことは沢山あったのに。
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