自己欲求
マサヤは直接家には帰らず、家のに近くにある海に来ていた。
既に日が地平線より下にあリ光の残場だけで辺りを明るくしている。
ポツポツと街灯び光も付き始めた頃
堤防の上に座り反射して見にくい画面をなんとか
見える角度を探しLINEの友達欄を見る。
個人トーク画面で何度も文字を打っては消し打っては消していた。
5回ほど繰り返した後無難な文を完成させた。
「今日はありがとうございます」
と送った数分後「こちらこそありがとね」と返事が返ってきた。
こんな当たり障りにない文面でもついつい頬が緩んでしまう。
海の潮風が体に吹き込む。独特な粘り気のある風。
今は心地よく感じる。
キャンパス内を歩くことに慣れ習慣化し始めた頃
周りの同年代の人達は男女問わず徐々に髪の毛が明るくなり
大学生感が強まっていた。
その行為が自由の象徴だと言わんばかりに周りに示しているが
僕には安い表現しているようにしか見えず
髪の毛を染めず講義にはちゃんと出席した。
「ようマサヤ」いつも僕の隣に座ってくるケイスケだ。
ケイスケとは高校で知り合い遊ぶことは
無かったが教室で仲良く話す程度の親密度だったが
同じ大学と言うこともあり、今では遊ぶようになっていた。
「講義終わったらお前のどっか遊びに行かね?」
とケイスケは体育会の軽いノリで聞いてくる。
「あー今日はバイトなんだ。今度誘って」
「了解。今どこでバイトしてんの」
「店員してる」
「いや、どこのだし」と語尾に(笑)が入っている返事が返ってくる。
ケイスケは高校でサッカー部に所属しており
上位カーストに君臨し異性にモテいた
それは大学生になっても変わらなかった。
「言ったら来そうじゃん」と言うとケイスケは
僕の肩に手を回し「いいじゃねーかよ」と言った。
「ケイスケおはようちゃんと来れてるじゃん」
と陽気な女性が後ろからやってきた。
髪は明るくミディアムヘヤーに内巻きされ小綺麗なかっこで
気の強そうな女性が教室内にヒール音を響かせ近づいてきたのだ。
「おはようユキ当たり前だろ、学生は勉強が仕事ですから」
とケイスケが言うとユキは笑い後ろの席に座った
ケイスケは「じゃあまたな」と言い、後ろの席に移動していった。
ケイスケのそういったところは本当に凄いと近くから
見ていると余計に眩しく見えてしまう。
誰かをサッと笑わせることができない僕は
ケイスケに対して憧れの気持ちと嫉妬心が芽生えている。
1人、また1人とケイスケに話かけ近くの席に座っていく。
ユキの様な派手な女性はもちろんだが
地味な女性にも人気があり前の席からチラチラとケイスケの方を見ていたり
自分の存在を知らしたいのか友達との会話の音量も少し大きくなっていた。
ケイスケと遊ぶことは、高校の頃に比べて多くなったものの
お互いに大学と言う名の新しい環境からの不安を紛らわせるために
接していた部分もあり遊ぶ回数も順調に減っていた。
講義が終わりすぐに教室を出て喫茶店に逃げ込むように入店した。
ドアを入って左の禁煙エリアの一番遠い窓際の席に腰を掛ける。
ブレンドコーヒーを頼み提出用のレポートを
大学入学と同時に購入してもらったノートパソコンに書いていく
ワードを起動し指をFキーとJキーにある突起を
目印に指をホームポジションをとる。
講義でもらった資料を元に作成してゆく。
僕はこの資料作成は嫌いじゃなかった
引用できる部分は引用し少し弱いところはネットを使って足してゆく。
そしてこのレポートに脚色を付けていくために自分の見解を書いていく。
集中してレポートを作成していると
「こちらブレンドコーヒーとなります」
と店員がお盆の上で湯気を立てコーヒーを香りを引き立てている。
「ありがとうございます」と言いつつ目線はモニターを見ていた
運ばれてきたコーヒーには口を付けずひたすらタイピングをした。
前のめりになりながら書いていると
不意にドアのベルの音が店の中に振動をあたえる
ドアの方に視線をやると先週あったばかりのマイさんだった。
少し気を紛らわすために真っ白なマグカップに口を付ける。
マイさんはこちらに気が付いておらず席に向かった
熱い内に飲んでおけば良かったと後悔を若干していると
マイさんは呼び鈴を鳴らしている。
急いでパソコンなどをバックにしまい伝票を手に取った。
そして、マイさんが注文を終えたタイミングを見計らい
偶然を装いマイさんの席に近づいた
「マイさんはこの曜日に休みなんですか?」
とできるだけ自然になるように話しかける
少し驚いた表情を浮かべながら上目使いでこちらをみた
「そうだよ。土日に休みたいんだけどね、なかなか希望通りとはいかなくてね」
と声のワントーンが注文の時と比べ下がったのがわかる
きっと身体的ストレスがかかっているのだろう。
沈黙が迷走する。
「大変ですね」
「まあ仕方ないよ」
「そういえばマイさんは趣味とかあるんですか?」
「私は趣味と呼べるものが無くて困っているんだよね」
「そうなんですね。趣味が無いって言うと
休日とか何をしている感じなんですか?」
「買い物に出かけるかな」
「いいですね。やっぱり都心部に足を運ぶんですか」
「んーそうだね」
「看護師の仕事はやっぱり大変ですか」
「かなりハードだと思うよ」
「例えばどういうところですか」
会話と言えるのか、いささか疑問を感じてはいたものの
それでも会話っぽいことをを続けた。
会話っぽいことを話している時にも、絶えず笑顔で答えてくれ心が和んだ。
「それでは」と言い僕は会計に向かう
駅に向かう道すがら
「今日はいい日だな。マイさんとも話すことができたし」
笑みがこぼれてしまうのを堪えながら
周りが見えないほどまっすぐ正面を向き背を伸ばし歩く
マイさんがこの後年上男性の家に行くことを知らずに…
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