第13話Ⅰ-13 ライフルハンティング(?)

■ストレージの中


サリナを一人キャンピングカーの中に残した俺はストレージの整理を始めた。

捨てるものとまた使うもの、補充しておくものを整理しなければすぐに物が取り出せない。

物は何でもあるが、検索している余裕が無い時はすぐに出せないと生死に関わる。


そう言うことで、『武器の部屋』-もちろんイメージ上の部屋-は様々な武器と弾薬を事前に調べて並べてある。

この部屋にある武器なら頭に浮かべるだけですぐに取り出せる。

今日も弾薬を結構使ったので、MP7とHK433の装填済みマガジンを追加しておく。


キャンプ道具は折りたたまずにそのまま『アウトドアの部屋』に入れておく。

ごみ関係は別の部屋だ。ごみの分別はしないので楽チンだった。


整理が終った俺は、前から試している呼び出しをもう一度やってみる。

自分の家が呼び出せないか試しているのだ。

住所、ネット上の写真で絞込みはバッチりなのだが、やっぱり呼び出せない。

家は地面に引っ付いているからなのか?

試しに隣のマンション全体も画像から絞り込んでみたが呼び出せない。

大きさはあまり関係ないはずだ、さっきのキャンピングカーはバスぐらいあるが簡単に出てきた。


考えてもわからないので風呂に入ることにした。

今日は大分の別府温泉の旅館からお湯を入れておく。

お湯につかりながら今日のことを反省する。


-油断大敵

-一歩間違えたら死んでるところだ

-できるだけ安全を確保して戦うようにしよう


一人反省会も終り、明日の準備も整ったのでアラームをセットしてから、キャンピングカーの様子を伺った。


車のエンジン音しか聞こえない、静かなのでサリナは寝たのだろう。

ストレージから出て、ベッドを見ると布団の下で丸くなっていた。


近寄ってコッソリ匂いを嗅いだが、ちゃんとシャンプーの香りがする。

やっぱりシャワーは大事だ。


キャンピングカーの照明を消してやり、俺もストレージ内のベッドに入ってすぐに眠りに付いた。


-翌朝


アラームより先にストレージの外から大きな音がする。

サリナも喚いているようだ。


-ガン、ガン、バン!-


「サトルさん! 獣がいっぱい!! 死んじゃう!」


キャンピングカーはガタガタ揺れて、何かがぶつかっている音がした。

窓から外を見ると・・・、獣に囲まれていた!


サファリバークの中でエサをもらう動物の集団のようだ。

50匹近くいるだろう。

殆どが昨日のマッドボアだがトリプルホーンも混ざっている。

元気なヤツがキャンピングカーに突撃を繰り返して車内は大きな音が響いていたようだ。

高級車が傷だらけだろう・・・、誰が気にするんだ?


さすがに鉄板をぶち破るパワーは無さそうなので、安心して準備することにした。

ストレージからスタングレネード(閃光手榴弾)×2、HK433アサルトライフル、H&K G28E狙撃銃とそれぞれのマガジンを10セット取り出した。


キャンピングカーの右側に多く集まっていたのでそちらの窓ガラスをアサルトライフルの銃床で叩き割った。

ガラスが落ちて少し後退したが獣どもはあまり気にしていなかった。

窓の下はブタ小屋を上から見たように獣たちが集まっている。


こいつらには申し訳無いが、エサをやるつもりは無い。

代わりに素敵なものをプレゼントしてやる。


ストレージからイヤーマフ(防音具)を二つ出して一つをサリナに渡す。


「俺がいいって言うまで、これをつけて目を瞑っといて」


今回は黙って頷いた。


スタングレネード2本のピンを抜いて窓の外に放りなげる。

すぐにかがんで目を瞑った。


-1.2.パーン!、パーン!


頭の中で3になった瞬間に音がはじけ、まぶたの向こうが光ったのがわかる。

すぐに立ち上がりアサルトライフルを手にとる。

窓から銃口を突き出したまま銃床を肩にあてて、キャンピングカーの周りでぐるぐる回りだした獣たちを撃ちまくった。


-パ、パ、パン!-  ギャウ! ウェ!

-パ、パ、パ、パン!- ギャ! ギューン!!

-パ、パ、パン!- グェ! キャン!


5回マガジンを付け替えて、近場の奴は全部撃ち倒した。

15頭ぐらいはしとめたはずだ。


最初に閃光弾を使ったのは視力と方向感覚を奪って逃げさせないようにするためだ。

屋外だから効果は薄いが近くで固まっていたのはまともに走れなくなっていた。


車の反対側を見に行ったが、反対側も近場はスタングレネードの音に驚いていなくなっている。


H&K G28E狙撃銃に持ち替え、レバーを操作して発射できるようにした。

この銃は重い、サプレッサー、スコープをつけて8kg近くになっている。


獣たちは50メートルから100メートルぐらいの距離に20匹ぐらい散らばっている。

狙撃の距離では近すぎるが、俺にはちょうど良い練習だ。

森の中では200メートルで練習していたが、動かない木と動く獣では全く違うはずだ。


50メートル先のトリプルホーンを狙うことにする。

窓枠に銃を載せて安定させ、イヤーマフを外して頬を銃につけてスコープを覗いた。


的にしたエモノが近すぎた、スコープからあふれ出てている。

だが、気にせずにトリガーを引き絞る。


-パッシューーーン!


7.62mm弾がエモノに・・・、外れた。

少し上を通過したようだ。


今度は胸の下辺りを狙って・・・


-パッシューーーン!


おおっ! 今度はちゃんと当たった。

その場で倒れてピクリとも動かない。


スコープから一旦目を離して、今度は一番遠くにいるマッドボアを狙う。

もう一度スコープを覗き込み、中心線をケモノの胸にあわせて呼吸を整える。

息を止めてからトリガーを絞る。


-パッシューーーン!


また、当たった! チョー楽しい。


本来はアサルトライフルで狙える距離を狙撃銃で遊んでいるだけかもしれないが。

銃を扱い出して高々20日ちょっとだ。

練習でかなり撃ったとはいえ、まだ自信が全然無いから近距離狙撃でたっぷり練習する。

100メートル以内なら半分ちょっとは当たる。


全部で15匹ぐらい倒したところで、見える範囲からエモノがいなくなった。

車の反対側にも見つからない。


俺は銃をストレージに戻して、空薬きょうが散乱するキャンピングカーの中を眺めた。

サリナは言いつけどおりにベッドに座って目を閉じている。


「キャァッ!!」


イヤーマフを外してやると絶叫したが、目を開けて俺を見ると・・・


「ウワァーン! 怖かった、こわくぁったーー!」


泣き出しながら俺の胸に飛びついてきた。


-あかん、こんなん初めてや


俺は、バクバクする心臓のまま優しく髪を撫でてやる。


「もう、全部追い払ったから大丈夫。朝ごはんにしようか?」


早朝ハンティングは無事に終った、朝から快調だ。


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