第14話Ⅰ-14 善きサマリア人
■キャンピングカーの中
朝食は準備するのが面倒だったので、コンビニのサンドイッチとソフトドリンクにした。
サンドイッチは袋から取り出して皿の上に並べてある。
サリナには準備をしている間に床の空薬きょうを集めてキッチンのシンクに入れるように頼んだ。
素直に集めて床を片付けてくれた。連れてきたのは今のところ正解のようだ。
「好きなもの飲んで、好きなもの食べていいよ」
向かいのソファに座ったサリナは頷いたが何も手にとらない、だが、無視して俺が食べ始めると同じように食べはじめた。
どう食べるかにまだ自信が無いようだ。
組合員証を取り出して、サンドイッチを片手に朝の成果を確認する。
-狼4 ゴブリン47 マッドボア23 トリプルホーン7
成果が30体増えている。
しかし、俺が思った数より少ない・・・まだ生きているのがいると言うことか。
食後にトドメを刺しに行くことにしよう。
「サトルさん、この大きな箱は誰かの家なんですか?」
「あー、そうだね。サリナの家ってことでいいんじゃない?」
「私をここに ・・・獣の中においていくなんて酷いです!」
「いやいや、この家も南までもって行くから大丈夫だよ」
「???」
朝食を片付けた俺は装備を整えて、キャンピングカーの外に出ることにした。
時間は8時10分だ、獣は夜行性で夜中に見つけたキャンピングカーで集まったようだが、今は見える範囲にいない。
アサルトライフルを構えて周りで倒れている獣を確認する。
5匹生きていているヤツがいたので、頭を打ち抜いておく。
キャンピングカーはストレージに戻した。
戻す時は戻すイメージだけで、この現実空間から消えてなくなる。
ストレージ内では『乗り物の部屋』に三輪スクーター等と一緒に並んでいるはずだ。
サリナにもヘルメットを被らせて透明のポリカーボネート製盾を持たせて罠を仕掛けた森の中へ進むことにする。
イノシシ相手では吹っ飛ばされるかもしれないが、牙や角の直撃は盾で避けられるだろう。
怯えるサリナをつれて森の奥へ進んで行くとガサガサ言っている音が聞こえた。
2匹のボアが罠に掛かっている。
俺達が近づくと必死で走り回り出した。
1匹はアサルトライフルを連射して仕留める。
もう一匹は死なないように単射で尻を狙う。
5発撃って2発当たった。
動きが鈍くなったところをテーザー銃で動けなくする。
「じゃあ、今日も頑張って!」
既におなじみの手順で治療→射撃→治療→電撃&射撃→治療・・・のループを40セット繰り返した。
電撃は最初だけテーザー銃で後はスタンガンにしておいた。
テーザー銃は片付けるのが面倒だ。
「で、今日はどのぐらい魔法が上達したの?」
「凄く!に決まってるじゃないですか!!」
「・・・、腕が千切れても大丈夫かな?」
「えーっと、多分」
「!」
本当かどうかの確認が出来ないが、本当ならたいしたものだろう。
■バーンへの街道
街道まで戻って三輪スクーターをストレージから引っ張り出す。
ガソリンを満タンにして装備を整えて再出発だ。
50km平均なら3時間程度でバーンに到着するはず。
しかし、30分程走ったところで、前方に馬車が止まっているのが見えた。
荷馬車ではなく、人が乗っているタイプのようだ。
周りにボアより大きな獣が2匹いる。
俺はバイクを止めて、双眼鏡で覗いた獣は虎のようだ。黒い体毛だがフォルムはそんな感じ。
双眼鏡内で距離は780メートルと表示されている。
-無視してバイクで突っ切るか、だが飛び掛られると・・・
-ここから狙撃銃・・俺の腕なら100%当たらない
考えた結果、もう少し近づいてから撃ってみることにした。
スクーターをゆっくり走らせて、200メートルぐらいの距離まで静かに近づいた。
街道の横に2~3メートル高くなっている場所があったので、そこへサリナを連れて小走りに登っていく。
「サリナ、後ろから何か来ないか見といて。来たらすぐに俺の脚を叩いて」
頷くサリナに笑顔を見せて、H&K G28E狙撃銃を取り出した。
地面に敷くマットを広げて腹ばいになり、二脚を地面につけて前方の馬車へ銃口を向ける。
双眼鏡で確認すると距離計は193メートルになっている。
当たらない距離では無いはずだし、スコープ調整もほぼ合っている。
虎は馬車の周りを周っている。
既に馬は殺されたようだ、血だまりの中で膝をついていた。
この位置からよく見ると・・・草むらの中に何人か人も倒れている。
伏射の姿勢でレバーを発射状態にした後に、頬を銃につけてスコープを覗き込む。
虎はゆったりと歩いている。
十字線が虎の肩辺りに重なった時にトリガーを絞った。
-パッシューーーン!
サプレッサーで殺された発射音が耳元で鳴る。
スコープ内の虎は横倒しになった。
命中だ!
-結構イケル気がしてきた。
スコープから目を離してもう一匹を探すが見当たらない。
逃げたのか?
しばらく様子を見ていたが、虎は戻ってくる気配が無い。
狙撃銃の変わりにアサルトライフルを構えて、ゆっくりと馬車に向かって歩き出した。
100メートルぐらい歩いたところで、馬車の窓から人が顔を出した。
帽子を被った男性で、俺からするとオッサンって言う年齢だ。
「グゥ、ウゥ・・・」
馬車の手前の草むらから呻き声が聞こえる。
近寄ると男が一人倒れていた。
顔から首にかけて大量に出血していて肉も抉り取られているようだ。
かなりグロい。
「サリナ、せっかくだから練習の成果を見せてよ」
「わかりました!」
意外とテンション高く男の側に駆け寄ってくれた。
肩膝を突いて、両手を男の首辺りに突き出す。
-オォー!!
男の出血があっという間に止まって顔色が良くなった。
抉られた肉は元通りには、成らないがカサブタのようなもので覆われていく。
魔法って本当にあるんだ!!
狼やボアではもう一つ実感が無かったが目の前でこれだけの結果を見ればリアリティ抜群だ。
呪文や魔法陣が無いのが寂しいが、あっちが作り物ってことか?
「ウゥー、ありがとう。お前たちは?」
「ああ、我々はよきサマリア人です」
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