第10話Ⅰ-10 ゴブリン狩り

■スモークの町


俺とサリナは馬車で1日掛かる予定の隣町まで1時間で到着した。

馬車はどうやら時速5~7kmで走っているようだ、1日に10時間進んでも50km~70kmと言うことになる。

スクーターは平均時速50km弱で走ってきたから当然といえば当然だ。


街道は砂地だが大きな凸凹は少なかった、それでも3回ほどビックリするぐらい弾んで、後ろのサリナが悲鳴と共に俺に密着してくれた。

多少の役得はセクハラじゃあないはずだ。

サリナは怖すぎるのか、走っている間は一言も口を聞かない。


途中二つの町では、一旦スクーターから降りて町を歩いて迂回した。

通り抜けるだけで入市税を払うのが馬鹿馬鹿しかったからだ。


三つ目の町スモークに着いたら10時30分だったので、一度休憩することにした。

で、今は町を見学中だ。


ここにも組合ギルドがあるから中を覗いてみる。

掲示板に出ている求人、仕事がエドウィンよりだいぶ多い。


求人は殆ど戦士、剣士、槍使いだったが、中には魔法士募集もあった。


-南方遠征、魔法士募集! 炎・治療必須! 

-戦士急募! 魔法士でも可、但し炎魔法必須 橙クラス以上!


残念ながら今のサリナでは失業中のままだろう。


仕事には狼以外にゴブリンの討伐もあった。


-至急ゴブリン討伐願う。国懸賞+銀貨1枚/1匹


国の懸賞はゴブリン5匹/銀貨1枚だから、5倍の追加だ! ビッグチャンス!

場所は東の森の奥か・・・、ちょっと聞いてみよう。


ここの受付のお姉さんはエドゥインと違って綺麗だった、優しい目でサトルを迎えてくれた。


「ゴブリン退治のことを聞きたいのですが、エドウィンの組合員でも大丈夫ですか?」


「初心者の方ですね? 大丈夫です、この国の中ならどこの組合ギルドでも証明書は有効ですよ」


綺麗な上に優しいお姉さんだ。


「森の奥のゴブリンですけど、何匹ぐらいいるんですか?」


「50匹ぐらいだと思います。ですが、お二人ですか? 絶対危ないですからおやめになった方が良いと思います。行かれるならお仲間を見つけてからになさって下さい」


眉を寄せて俺を心配してくれた。


「大丈夫です、外にも仲間がいますので。場所は何処になるんですか?」


「・・・そうですか、でしたら・・・」


お姉さんの説明ではここから歩いて1時間ぐらい行くと、森の奥で多くの木に赤い布が巻いてあるらしい。それより先に行くなと言うことだが、さらに奥にゴブリンの洞穴がある。


洞穴ならさっそく試してみたいことがあった。


ギルドを出た瞬間から「無理」、「死んじゃう」、「止めて」、「考え直して」、「お願い」を連呼したサリナを無視して町の外まで一旦出た。


「じゃあ、ここで別れることにしよう」


静かになったサリナをスクーターに乗せて、道なき道をゆっくり走り始めた。

森の入り口まで時速20kmで20分ほど走った。

ここから森の奥なら徒歩で30分かからないだろう。


森は背の高い木が鬱蒼と茂っていて、中に入ると昼でも薄暗かった。

人目がないことを確認してから俺は装備を整えた。

ヘルメット、防刀ベスト、タクティカルベストを着込んでから、グロックとMP7のホルスターをセットする。

MP7のマガジン6本をベストに入れ、アサルトライフルHK433を持って森の中へ進んでいく。

サリナは無口になったが、我慢して付いて来ている。

 

お姉さんの言う通り、20分ほど歩いた森の奥に赤い布が巻かれた木を発見する。

目印から200メートルほど先が小高い山のようになっているから、あの辺りに入り口があるのだろう。


見つけた洞窟の入り口は想像より小さかった、高さ1メートルほどだ。

大人はたって入れないだろうが、ゴブリンなら・・・

周囲を警戒しながら他の入り口を探したが、最初の入り口しか見つからない。


1箇所なら狩り放題だろう。


サトルはストレージから、大型扇風機、自家発電機、催涙弾×30を取り出した。

先に大型扇風機を動かして、強風を洞窟内に送り始める。


「サリナ、一緒にこれを洞窟の中に投げ込んで」


催涙弾のピンを抜く方法をサリナに説明して見本を見せた。

最初に投げた催涙弾から白い煙が上がり出した、扇風機の風で煙は奥に流れていく。

どんどん催涙弾を投げ込んでいく、30個投げ込むのに二人で1分ぐらいだったろうか?


「じゃあ、下がろう」


サリナを連れて入り口から30メートル程後退した。

アサルトライフルを肩につけて洞窟の入り口を狙う。


かなり待ったような気がしたが、洞窟の中からわめき声聞こえて来た。

段々大きくなって来て・・・、小さい緑の固まりがいくつも飛び出してきた!


-パ、パ、パン!-  ギャウ!

-パ、パ、パ、パン!- ギャ!

-パ、パ、パン!- グェ!


飛び出してくるゴブリン目掛けて短い連射を繰り返した。

マガジンが空になったHK433を地面において、MP7に持ち替える。


-パラ!-パラ!-パラ!  グェ!

-パラ!-パラ!-パラ!-パラ! グェ! グェ!


連射しすぎないように注意してトリガーを何度も引いた。

MP7のマガジンが5本空になったところでゴブリンは出てこなくなった。


HK433にマガジンを再セットして、慎重に倒れているゴブリンに近づいていく。

動いている奴が何匹かいたので頭を撃ち抜いていく。


周りも確認したが、催涙弾の煙が出ているところは小さな穴ばかりだった。

やはり洞穴の入り口はあそこだけのようだ。


扇風機の周りで散乱するゴブリンの死体を数えるのはやめにして組合員証を見た。


-狼4 ゴブリン47


50には届かないが、銀貨47+9+α? で銀貨56枚はもらえるはずだ。


「サトルさん、今の魔法は?」


「そうだな・・・、スモーク&ガンってところだね」


「???」


予定通り洞窟に入らずに大量のゴブリンを仕留めた俺は満足して扇風機と発電機をストレージに戻した。

出しっ放しでもいいような気もするが・・・、


俺にとっては今日の方が狼よりも達成感がある、戦術どおりに行ったからだろう。

ほぼノーリスクで撃てるのは最高だ。

まだまだ撃ち足りないが、楽しみはこれからもあるだろう。

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