第9話Ⅰ-9 この世界の魔法
■エドウィン近くの森
食事を終えた俺とサリナはテントの中に移って横になった。
もちろん別々の寝袋の中にだ。
念のため枕元にはMP7の銃口をテントの外に向けて置いてある。
「さっきの話の続きだけど、なんでサリナは魔法力が沢山あるの?」
「私は、ご先祖様が偉大な魔法使いだったって聞いています。だから、おじいちゃんもお母さんも魔法力が凄くて、みんなから尊敬されていました」
「おじいさんとお母さんも癒しの魔法を使ってたの?」
「・・・二人とも全部使えていました。でも、サトルさんのは見たこと無いです」
「全部って言うのは何ができるんだ?」
「全部は全部ですけど、炎、水、風、土、そして光の魔法です。本当に知らないんですか?サトルさんの魔法はどれになるんですか?」
どうごまかすか?
正直に言ってごまかすのが吉と見た。
「ああ、俺のはどれでもない。俺はサリナが知らない遠い国から来たんだ。だからこの国のことを全然知らないんだよ」
「???」
「それで、癒しの魔法はどの種類になるの?」
「それは、光の魔法ですけど・・・、本当に知らないんですね・・・」
「なるほどね、で、何でサリナは光の魔法しか使えないの?」
「・・・わかりません、でも、他のもいつか使えるようになるはずなんです!」
「お兄さんはいろいろ使えるの?」
「兄は炎が一番得意で光と水も少し使えます」
サリナには能力が引き継がれてないのか?
でも、親の能力を100%引き継がれるもんでもないし、そんなもんかもな。
「ところで、今日の魔法練習はどのぐらい役立ったの?」
「凄くです、スゴク役に立ってます。1日であんなに上達できれば凄いことです」
全く判らんな、凄い以外にバロメーターを持って居ないのかこいつは。
「骨折ぐらいは直せるって言ってたけど、治療魔法はどのぐらいの怪我まで治せるの?」
「大魔法士なら死んで無い人は治せるはずです」
「!」
それは凄いな。
そこまでたどり着けるなら、万一のために連れて行っても・・・
「サリナは本当に南へ行きたいの? それと、お金とかは持ってる?旅費も要るでしょ?」
「行きたいです! もうここには居ることができないし・・・、お金は・・・せん」
最後はあいまいだが、金は持ってないのか。
「一緒に行くなら俺の言うことを聞いて貰わないといけないけど、大丈夫?」
「連れてってくれるんですか!? でも、やっぱり
「さあ、何をするかは約束できないけど、何をされても我慢するぐらいの覚悟が無いと連れて行けないな。それと、最後まで一緒に行けるかもわからない。途中で別れるかもしれない。それでも良ければ、明日から南へ行っても良いよ」
今のところは何をするつもりも無いが、脅しておけば頼みごとがしやすくなるだろう。
「・・・わかりました。酷いことでも・・・我慢します」
-だから、せえへんっちゅうねん。
「じゃあ、そろそろ寝るか」
俺はランタンの火を消して寝袋にもぐりこんだ。
「やっぱり、暗くしてから・・・酷いことを?」
-寝るだけや!
翌朝、トーストにバターを塗りながら南への行き方をサリナに聞いていた。
サリナたちが南と言っているのは南方州という場所だった。
そこにバーンと言う大きな町があって、ギルドメンバーはみんなそこを目指していた。
道中もモンスターが沢山出るが、バーン周辺では人が昼間も出歩けないレベルになっているそうだ。
バーンまでは馬車で10日ほど掛かるらしいが、途中に町が何箇所かあるのでそこで泊まって行けば昼間の移動だけで到着することができる。
ダイジェスト版にするとそう言うことだ。
俺は移動手段の変更を考えていた。
サリナにチャリを覚えさせるのも面倒だし原付ぐらいに挑戦してみるか。
タブレットで色々検索していると、4輪バギーと3輪のスクーターが目に留まった。
乗り慣れていないから転倒しないものが安心だ。
馬車を追い越しやすそうだったので、3輪スクーターをストレージから引っ張り出した。
YAMAHAの前輪が3輪になっているタイプだ。
「馬車? 馬は?」
サリナの「?」に付き合っているとキリが無いので、エンジンをかけて操作を確認する。
アクセルがあること以外は自転車と大差ない。
20メートルほどゆっくり走らせたが不安は無かった。
携行缶からガソリンを移して満タンにする。
ヘルメット、ゴーグル、マスクも用意して、サリナと二人で装着した。
サリナは「?」の数が多すぎて、ついて来れ無いようだが言われた通りに用意して、俺の後ろに跨った。
さあ、南へ出発だ!
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