第3話 あーちゃんと少年1

 少年が気が付くと、そこは心地いい風の吹く丘だった。


 上体を起こし、周囲を確認する。



 何故ここに居るのか、全く思い出せなかった。



 心地の良い風、香る瑞々しい草木。


 猫。



 「猫……」



 ここは何処だろう、と首を傾げながら猫を抱く少年。


 大人しく抱かれる猫を胸に歩きだす。



 魔物を率いていた存在を追って、別の世界に足を踏み入れた少年。


 その時に転び、たまたま打ち所が悪くて記憶が飛んだ少年は、誰が悪いのかいまいち判らない原因で、何もわからないまま未知の世界へと踏み込んだ。



 猫がにゃーと鳴く。


 この少年が魔物を率いていた存在と再会する事は生涯ない。


 彼はこの先の村で助けられ、寿命の短いこの世界で孫まで得て膝に抱き、天寿を全うする。

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