第7話 練習試合ゲット

 飯野家いいのけの食卓にて父、母、兄の真守まさもり、妹の真惚まほ、の4人で夕食を摂っている。

 テレビの画面には気持ちを曇らせるニュースが流れている。

『自殺率が過去最高を記録しました。専門家は原因を調査しているがはっきりとしたことはわからないとしています。日本国内だけでなく世界的に同じような現象が起きてます。異例の事態につき、臨時の国際会議を行ない、原因究明および解決を急ぐ模様です。それでは次のニュースです。』

 世間では大変なことが起きてると騒がれている中、飯野家は素知らぬ顔で普段通りの会話をする。

「今度の日曜日に練習試合が入った」

 真守は野球部の練習試合があることを告げる。

「ふーん。そう。何時から?」

「1時から」

「ご飯はどうするの?」

「食べてから出る」

 母と真守が会話をしている。母としては家でご飯を食べるのか。それともお弁当を持って行くのかによって、その日のスケジュールが大きく変わるため重要だ。

 真守はそれを知ってか練習試合がある際は必ず伝えている。

「練習試合⁉ 私も行ってもいい?」

「別にいいけど、見てても面白くないだろ?」

「あれ? 真惚は野球に興味あったっけ?」

 真惚が練習試合を見に行きたいと話す。すると、真守と母が「本気で言ってるのか?」という形相で真惚に言う。

 真惚が野球に興味がないことを知っているため、家族は疑問に思う。

「最近は興味でてきたから、生のを観てみたくて!」

 プロ野球観戦に誘おうとしていた際に準備していた言葉を真惚はこの場で使った。

 母は「え⁉ どこがいいの?」という顔をして驚いている。父と真守は仲間が増えたとうれしく思えた。

「お⁉ なら来るがいい!」

「うん! 行く!」

 真守は真惚が見に来ることを了承した。こうして真惚は兄と過ごす時間をひとつ手に入れた。

「そうか……遂に真惚が野球に興味を……」

 父は嬉しそうだ。もしかして泣いているのかな?

 母はあきれ顔で言った。

「そんな、お父さん、大げさな……」


 別の日、リビングにて父と真惚の会話である。真惚が兄の練習試合に行くよりかは前の日だ。

「プロ野球、テレビでやってるけど見ないか?」

「お兄ちゃんの試合を生で見るから大丈夫!」

「……そうか」

 真惚は兄の試合を見に行く。しかし、父とプロ野球は見ないことを知り、父は寂しく思う。

 真惚が本当に野球観戦を好きになるのはまだ先のようだ。もしかしたらそんな日は来ないのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る