第2話 美少女、自称ロリ紳士に委ねられる

馬車の傍に車を止め、辺りを確認してから車を降りる。

最初に撥ねた魔物2匹に止めを刺し、馬車へ歩み寄った。

馬車の傍らには肩から腹ま深く切り裂かれた男が倒れている。

その横には泣きながら男に声を掛ける少女が居た。


英語じゃないな・・・何語だろう。

それにしても出血がかなり多いな、これはヤバイんじゃないか?


ヘルメットを脱ぎながら車に戻り簡易救急セットとお茶のペットボトルを取り出し男の下に戻る。


「おい、大丈夫か?とりあえず傷口を見せろ」


「□□□、□□□□□□□、□□□□□□□□□□」


「単なる水よりはマシな筈だ」


傷口にお茶を掛け血を洗い流したが傷が深すぎて出血が止まらない。

救急セットのガーゼで傷口を圧迫するがとても間に合わない程に傷は大きかった。


意識は長く持たないだろうな・・・こんな酷いのは映画とかでしか見た事がない、俺のできる範疇を超えている。


過去、消防団で出場して救助等を手伝ったり遺体の捜索をしたが、目の前で人が死に逝くのは初めての経験だ。

黙っている俺に男は苦しみを堪えるような目で見つめながら手を伸ばし話しかけてきた。


「□□□□□、□□□□□□□□□□□□」

「□□□□□□□」


何を言っているのか全く理解出来んし、そもそも聞き取れん。


「済まない、何を言っているのか理解できないんだ」


頭を横に振り詫びると男は俺の手を掴み必死の形相で横で泣いている少女を見やった。


あぁ、なんとなく解ったような気がする、要はこの子をお願いって所だろう。

助けてしまったし、これも何かの縁か・・・住んでいる所まで送れば後は母親なり親族なりが何とかするだろう。


そう思い少女を見つめた後、男と視線を合わせ握られた手を強く握り返し反対の手を自分の胸に当て頷いた。


「□□□、□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□」

「□□□□□□、□□□□□□□□」


男は少女に何か語り掛けると、イヤイヤとでもいうように頭を振ったが、やがて少女は頷いた。


よく見るとスゲー美少女だな、金髪に緑の瞳・・・長く伸びた耳、エルフみたいだなって言うかエルフなのか?父親っぽいこの男は普通の外人にしか見えない、何か訳ありなのか。


そうこうしているうちに男の息が荒くなり血を洗い流したお茶のボトルに目をやっている。

ボトルを軽く掲げると頷いた。


末期の水ってやつかよ、仕方が無いよなもう助からんだろうし。


肩を抱き起こしてお茶を飲ませると、大きく息を吐きそのまま静かに息を引き取った。

少女は男に縋り付き泣き崩れている。


死体をこのままにする訳にもいかないだろうし、収容するしかないよな魔物なんぞが出てくるような所で警察が現場検証なんかする訳ないし、そもそもここは多分異世界ってやつだろ。


厨2病っぽい考えだとは思いつつも現実に魔物がいる以上、そうとしか思えなかった。

そんな事を考えながら馬車の荷台を確認する。

荷台には布の袋に入った何かと、大き目の木箱等がいっぱい積んである。

馬車を牽いていた馬は頭を割られて死んでいる。


馬車も、このまは放置って訳にも行かないよな・・・商品っぽいし、とりあえずヒッチメンバーに繋げるか試してみよう。


馬車と馬の死骸を切り離し、ジャッキで接続位置まで持ち上げてから手綱等を使いヒッチに固定した。


「何とか牽けそうだな、後は遺体か・・・」


車は商品満載でムリだとして、荷台の商品っぽい物の上に血だらけの遺体を載せる訳にもいかない。

仕方なく商品を並べる時に使うブルーシートに包み、荷造りロープで縛ってから荷台に乗せた。


少女は目を真っ赤に腫らして泣き続けていた。

男の遺体を包んでいる時も積み込む時もずっと俺の横にいて上着の裾を掴んでいる。


歳は幾つ位だろうか、小学生高学年から中学生位か?


少女に向き直り声を掛けた。


「君、名前は?」


う゛、ビクっとされたよ・・・ショックでけえ、そりゃあゴツイ体型(実際はチョイ肥満)で強面&スキンヘッドだが、美少女には優しい紳士なつもりだ。

美少女にそういう対応をされると落ち込むぜ・・・まあ逃げられないだけましか。


そう思いもう一度声を掛ける。

今度は少し腰を落として目線の高さを合わせながら。

出来るだけやさしく語り掛けた。


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