1章 おっさん、異世界に飛ばされる
第1話 初めての人身?事故
道に出てゆっくりと進む。
土が露出ていて農道みたいだ。
幅はあまり広くなく、普通車がギリギリすれ違うことが出来る程度だ。
ただでさえリフトアップしてビックタイヤを装備しているので、ノーマルよりも幅がある。
燃料は出掛けに満タンにしたし、燃料缶にも入れてあるから心配は無いが、周りを見渡しても電柱1本立っていない。
小高い丘を越えようとした時に思い立って後部座席の商品箱から単眼鏡を取り出した。
高所からなら遠くが見渡せる。
単眼鏡ならもっと遠くも。
「とりあえず、舗装されてる道を見つけないとな」
舗装路を走れば流石に家とかを見つけられるだろう。
単眼鏡を覗き込み周囲を見るが平原と森しか見当たらない。
いったいどう言う事なのか、そもそも市街地の国道を走っていたはずだ。
頭の中でパラレルワールドへの転移やタイムトリップといった厨2病染みた考えが浮かぶ。
いや、有り得ないだろ俺はもう30代後半だし、そんなのは10代の若者に起きるって相場は決まってる。
そもそも、オタク体質ではあるが俺は夢見がちな大きい子供ではない。
そんな夢物語など有る筈が無い事を知っている。
と、丘を下った道の先に馬車っぽい物が見えた。
単眼鏡の倍率では良く解らないが多分馬車かリヤカーだろう。
このご時勢に馬車って事は無いか、観光用のかな?
人も見える、この辺りの農家の人だろうか。
「とりあえず道を聞こう」
乗り出したサンルーフから車内に戻り走り出した。
丘を下り馬車に近づくにつれ、違和感を覚える。
農家の人らしき人物は馬車の周りで何かを振り回し、まわりに居る家畜っぽい物を威嚇している様に見える。
「つうか、家畜じゃねぇ?何だあの緑っぽいのは」
なんかゴブリンとかグレムリンとか魔物っぽい生き物だ。
俺は慌てて車を止めた。
「マジかよ!」
って事は襲われてる?
どうする、助けるべきか?それともとっとと逃げるべきか。
そう思っているうちに農家の人は魔物っぽいやつらに追い詰められていく。
ふと荷台の中に子供が居るのが見えた。
「くっそ~、損な性格だよ」
そう呟きながらトランスファーを四駆に切り替えパワーモードのスイッチを押す。
2,8ℓディーゼルターボは唸りを上げて馬車へ向かって加速していった。
聞きなれない音に男と魔物は目を向けた。
それは見た事のない大きな白い塊だった。
その白い塊が突き抜けるような大きな音と供に唸りを上げて迫ってくる。
男は思った、神か悪魔か。。。いやどっちでも良い、この危機を救ってくれるのならば。
「どけー!轢き殺すぞクソがぁ」
クラクションを鳴らしながら男を半包囲している群れに突撃した。
突撃する瞬間、男が魔物(もう俺の中で確定)に深く切り裂かれるのを目にした。
「ギャッ」「ゲッ」
突撃で2匹を撥ねた。
ごっついカンガルーバーとアンダーガードを付けてるから損傷は無いだろう、そうであって欲しい。
撥ね飛んだ魔物はピクリとも動かない。
「ヤッベー、狙って生き物撥ねたの初めてだ、しかも人っぽいの!人身だぜ人身!!」
興奮冷めやらぬ中、急いで旋回し残りの魔物を確認する。
魔物は逃げ出していた、1匹は突撃した時に少し当たったのか足を引きずっている。
残りの3匹はそいつを置き去りにして走っている。
仲間をもし呼ばれたりしたら厄介か。。。仲間が居るかも解らないし
「こういう時はやっぱ、皆殺しだよな」
なんだかわくわくしながら走り去る3匹に向かいアクセルを踏み込んだ。
いくら魔物といえど2本の足で走る者に車が追いつけない訳が無い。
グングン加速して3匹を次々と撥ねる。
魔物は吹っ飛んで何か有り得ない形に変形しながら転がった。
残りの1匹は3匹に追いつく最中に既に撥ねている。
車を止めて後部座席においてある釣竿ケースを開く。
「いつも置きっぱなしにしてたけど、逆に置いてて良かったな。」
それは古武術の稽古に行く時に道具類をまとめて入れる事ができて
いかにも私、武道・武術やってま~すと見られるのが嫌でカモフラージュの為に使っているケースだった。
試斬用の刀を取り出し、商品のフルフェイスヘルメとゴム付き軍手を装着した。
サンルーフから顔をだし単眼鏡であたりを確認する。
どうやらもう魔物は居ないようだ。
車外に降り転がっている魔物に近づいてみる。
念の為、刀を抜き払い切っ先で突く。
反応は無いが安全確保のために深く突き刺す。
魔物の血は青黒かった、刀に纏わり付く事も無くさらりとして刀から全て流れ落ちていく。
不思議な物だと思いつつ、他の魔物へも止めを刺してから車に乗り込み馬車へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます