オタ中年異世界転移道中記

高原 信

プロローグ

「どこよ?ここ」


最初に口をついて出た言葉はそれだった。

つい先程まで俺は国道を走っていた筈だ、それが何故か平原の中に居る。


「これはいったい・・・」


目の前にいきなり落ちた落雷に突っ込んだ所までは覚えてる、かなりでかかった。

とりあえず、車から降りて異常がないか確認してみよう。


「ふむ、どこも燃えたり焦げたりしてはいないか」


車に異常がないかを確認した後、周りを見渡した。

平原だ、特に何もない、遠くに森と丘が見える。

鳥の囀りが聞こえる、遠くには川が有るようだ、爽やかな風が吹き抜けて行く。


「って、のんびりしてる場合か、早く行かないと出遅れちまう。」


今日は月に一度のフリマの日なのだ。

貴重な収入源である、今日の出店を逃すとまた一月後まで待たなければならない。

なんとしても到着せねば。

あわてて周りを見渡し道を探すと、少し離れた所に未舗装の道が見える。

遠くに見える森の方から続いているようだが、反対側は小高い丘に阻まれて先は確認できない。


「とりあえず、行ってみるか」


車に乗り込みエンジンを掛ける。

起動したナビで現在位置を確認しようとするが出来ない。

衛星からの電波を受信出来ないようだ。

おかしい・・・今日は晴れだ、曇っていても最低でも一つは受信できる筈。


「地図は出てるし・・・って、さっき走ってた場所のままだよこれ、マジかよ・・・さっきの落雷でぶっ壊れちまったのか?高かったのに」


ラジオもテレビも受信出来ないようだ。

CDとミュージックプレイヤーは問題なく作動する。

HDDナビが単なるミュージックプレイヤーになっちまった。

仕方が無い、スマホのナビを使うか。


「ファッ?」

携帯もダメだ、圏外になってる。

シガーライターから電源を取っていたせいでこいつも逝っちまったのか?

SIMカードを何度挿し直しても圏外のままだ。

起動はすれど、圏外のまま・・・


「あ゛~、今月は出費が嵩むなぁ」


最悪だ、ただでさえ貧乏なのに。


「そうだっ、PC!」


ノートPCでも確認は出来る筈、助手席の鞄からノートPCを取り出して起動させる。

通信端末を接続し、起動!


「オイオイ、こっちも圏外って・・・」


どうやら携帯が壊れた訳ではないようだ、この辺り一帯が圏外なのか。

仕方が無い、とりあえず道路に出て進んでみるか・・・。

ノートPCを鞄に戻し助手席の足元に放り込んだ。

道路ではない平原だ、無闇に走ると窪みに嵌るかも知れない、注意しないと。

周りに注意しながらゆっくりと道に向かって走り出した。

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