第14話 中垣内の告白と疑念
みんな本に取り込まれたのは覚えているか? ……あぁ、あの時カウンターの上にあった本だ。本から伸びていた黒いものに掴まれて、引きずり込まれて。その後意識を失っていたんだが、気がついたら柊の木しかない妙な空間にいたんだ。
真っ白なその空間はあたり一面が柊の木で覆い尽くされていた。一応、お前たちのことも探してみたんだが見つかるのは柊とあのバケモノ……『
「ちょ、ちょっと待った! なんだよソレ、『彼方人』って」
大人しく中垣内の話を聞いていた一同だが、聞き覚えのない単語に思わず奥村はそう尋ねた。周りにいる佐野や萩原、二柏もそう言いたげな顔をしている。唯一、先ほどから共にいる『柊さん』だけは罰の悪そうな顔をしているが。
「あー、その辺は後で話すから、取り敢えず此処に至るまでの話を先に済ますぞ」
不思議そうな顔をする四人に若干の申し訳なさもあったが、中垣内は焦っているのか話の先を続けた。
で、まぁその『彼方人』に出会う度、対処していたんだけどそのうち、彼らに囲まれるようにして眠っているこの人を見つけたんだ。
そう言って中垣内は自身の隣に並び立っている『柊さん』に目線を動かした。
「この人、何者なの〜?」
萩原はいかにも警戒しています、と言うように『柊さん』を睨みながら中垣内に尋ねた。彼の象徴ともいえる愛らしい垂れ目も今ばかりは、きっと吊り上っている。
「……もしかして、アレの親玉?」
すると二柏も同じようにして中垣内に尋ねた。もともと目つきの良くない彼の瞳はさらに鋭さを増しており、今なら瞳で人を射れそうだ。
「いや違う。が、恐らくこの世界を創ったのは『柊さん』だ」
「は? どう言うことだ。説明しろ」
すっと目を細めて問う佐野。そこにはいつものような人当たりの良い笑顔など微塵も見えなかった。
「もちろんだ。だがその前に聞きたいことがある」
佐野の気迫に押されながらも中垣内はしっかりと返事をした。
「お前たちは、ここで何を見た?」
静かにそう四人に尋ねた中垣内の意図を、ここにいる誰も理解ができなかった。しかし、彼があまりにも真剣な顔で言うものだから、ぽつりぽつりと一人ずつ話し始めた。
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