第11話 奥村の告白とバケモノ
オレは特にこれと言ってなにもなかったんだ。
本当に、なにも。ただ起きたらこの雪の中にいたってことぐらい。それで、滅多にみない雪にちょっとはしゃいで走り回ってたら英と優成を見つけて、まぁ、その……今に至る、的な?
「……」
語られた奥村の話は、先の三人のもの(佐野は合流してすぐに自身のことを三人に語っている)とはあまりにかけ離れており、これには流石に佐野も閉口した。
「だから言いたくなかったのに……」
恥ずかしそうに顔を赤く染めた奥村はそっぽを向いた。
「太一クンもまだまだ子供ってことだよね〜」
「……確かに」
そんな奥村の様子を見て、怯えていた二人も元気を取り戻したようだ。二柏と萩原の顔からは先程の恐怖の色がすっかり消え失せている。
「なっ、お前らだってまだ子供だろう⁉︎」
そう言い赤い顔をしながら奥村も負けじと吠えた。
だがそれは二人の笑いのつぼを擽るだけで、二人はさらに笑みを深くした。そんな三人をみて佐野も柔らかな微笑みを浮かべている。
しかし、その笑みもすぐに鳴りを潜めた。
「おい、アレ!」
彼は、音もなく数十m先に現れたソレを見つけてしまったのだ。黒く燻る、形という形も持たない異形のモノ。哀しきモノ達の集まりを。
「アレが……」
佐野の視線を辿り、始めて例のモノを目にした奥村は、その異質さにひゅっと喉を鳴らした。離れているはずなのに感じるソレから放たれている禍々しいもの。実際に目にしなければ理解できないであろう恐怖。そんな彼の背後には、かのバケモノの恐怖を味わった者達が怯えた目をして身体を震わせている。
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