第10話 二柏の告白
……僕は気がついたら、路地裏みたいな所に倒れてた。状況整理をしたくて、しばらくそこにいたんだけど、気になって路地裏を出てみたら、なんかレトロな街並みが広がってたよ。あ、優成は屋敷に人影見つけた? ……そう、誰も居なかったんだね。……僕は、街に出たら沢山の人がいたよ。沢山の人が街を行き交っていた。洋服を着ている人も、和服を着ている人も、いろんなものが入り混じってたよ。
……僕も心細かったから、皆のことを人混みの中に探してみたんだけど、あまりにも人が多くて全く探せなかった。それで一旦人の少ないところに行こうと思って、そしたら街の中央辺りに綺麗な花をつけている木のある公園があったから、そこに行こうとしたんだ。丁度人も居なかったから。
けど、もう少しでたどり着くって時に、たまたま通りかかった路地裏からバケモノが現れた。黒くどんよりとしていて、どこか悲しそうで、けど笑ってた。笑ってたんだけど、ニコっていう感じじゃなくてニタっていう表現の方が近いかな。見ていて背筋が凍るような、そんな笑顔。顔はなかった気がするけど、少なくとも僕にはそんな風に見えた。アレに捕まっちゃいけない、直感でそう感じた僕は、街の人波に逆らって走った。
走って走って、息が切れても、足が縺れても走った。そうしたら知らないうちに景色が変わっていて、此処にいた。
「それってもしかするとユウを追いかけていたやつと一緒か?」
二柏の話が終わったのを確認すると佐野は静かに彼に尋ねた。
「……多分」
二柏はその時のことを思い出したのか、僅かに身体を震わせてそう答えた。
「英、大丈夫〜?」
自身と同じ恐怖に晒された友人を気遣って萩原はそう言うと、二柏に近づいていき恐怖に揺れる身体をそっと抱きしめた。
「……うん、大丈夫。ありがとう」
「あ、お前は無事だったのか、太一」
語られた二人の身に起きたことに、佐野は気になってついでとばかりに奥村にも尋ねた。
「あー、まぁ、うん」
奥村にしては珍しく、歯切れの悪い言葉を紡ぐと、彼もまた自身の身に起きたことを語り始めた。
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