第9話 萩原の告白

 ボクは気がついたら平安時代とかにありそうな屋敷にいたよ〜。立派な所だった〜。庭の池も大きかったし、屋敷自体もね〜。

 けど此処みたいに月とか星がなかったから、ちょっと暗くて怖かったかな〜……。でも、皆が屋敷のどこかにいるかもしれないって思ったから取り敢えずその屋敷の中を探検してたんだ〜。あ、これでもきちんと罪悪感とかはあったからね、勝手に屋敷を歩き回ってごめんなさい、ってね。

 けど一人で本当に不安だったから早く皆と会いたくて……。そうしていたらいきなりなんか、こうよくない感じが後ろからしてきて。振り返らなかったから確認は出来ていないんだけど、とにかく捕まったら不味いと思って屋敷の中を走ったんだ。それで無我夢中でがむしゃらに走ってたらいつのまにか此処にいたんだ。


「皆がいるかもしれないってわかっていながらもボクは皆を見捨てて逃げたんだ。ごめんね、ヒロ、太一クン、英クン……」

 萩原は、申し訳なさそうな顔をして自身の体験談をそう締めくくった。珍しく語尾が伸びていないことから、真剣に言ったのだろうということが伝わってくる。

「仕方ないだろう、それは。気にするなって!」

 そう言って佐野は、先程の衰弱した様子をちっとも感じさせないで萩原の頭をがしがしとかき混ぜた。

「そうそう。結局こうしてオレ達は無事なんだしさっ」

 奥村も『うんうん』と頷きながら責めることなく笑った。

「……うん、僕もそんな目に遭ったら、迷いなく逃げるだろうし……。というか僕も、逃げてきたんだ」

「え、英クンもなの〜?」

「大丈夫だったか?」

 二柏の唐突なカミングアウトに萩原だけでなく、奥村と佐野も心配するように声を揃えた。

「……次は、僕の番だね」

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