第16話

「いやーまさか本当に喋れない人が居るとは思わなかったよ!あー失敬失敬、悪気があって言っているんじゃないんだ。このタイミングで来てくれるとは思わなくてねえ。」


扉から顔を出した初老の男は事情を説明するとこんな感じで喋りかけてきた


「そちらのお嬢ちゃんは妹さんかな?まあつまらないかもしれないが数日間付き合ってもらうことになるね。立ち話もなんだ、中に入って入って。」


促されて僕たちは中に入る

中も別段変わったところはなく普通の民家だと思う

僕らの記憶に無い不思議な箱や蝋燭ではない明かりがあることを除いて


「ねえおじさん、あれは何?」


シイが明かりを指差し問いかける

彼はきょとんとして不思議そうにこちらを見つめている


「君達は電気を知らないのかね?」


電気、というものを知らないわけではない

ただ電気という存在を知っているのと利用方法を知っているのは別の話だ


「知ってるけどこういうことに使えるってのは知らなかった!いろいろ知るのって面白いねおじさん!」


シイの言葉に男は笑顔になり彼女の頭を撫でた


「そう!知るということは素晴らしいことなのだ!無知は恥ではない、むしろ知ろうとしないことこそ恥なのだよお嬢さん!」


両手を広げこの世のすべてを語るように喋る


「電気とは一概には言えないというのは知っているようだ!ではそれを効率的にそしてエネルギーに変換し日常生活にて使いやすい形にするには方法があってね?これはまず直流と交流の話にもなるんだがまずはこちらの黒板を見てもらいたい!素人の君達にもわかるように・・・」


電気について人一倍の知識を持っているのは確からしい

しかしこれは話が長くなるかもしれないからどうにか止めたいのだが、と思いシイに目配せをする

シイは呆れた顔をしていた

ため息をつき男に近づいていく


「教授さん?あなたの講義は私たち素人にはまだ早いと思うの!それに今回は電気について聞きに来たのじゃなくて彼に声を出させてほしくて来たの!」


さすがシイ、直球だ

男は忘れていたと言わんばかりに手を打ち僕の方に向き直った


「そうだったそうだった!私の研究成果がどれほどかというのを世間に知らしめるために素晴らしい発明をしたのだ!君のような被検体、あー失礼!協力者を待っていたのだよ!」


僕に近づき両肩を力強く掴まれた

少々痛かったがとりあえずは我慢の時だろう


「ではこちらに来てもらおう。お嬢さんも見学していくといい、私の世紀の大発明をね!」


ずっと大きな声で喋り続けている

政治家や役者に向いている気がするのだが・・・

とりあえず彼の指示に従い奥の部屋へ向かった

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シイとヒイ~二人の意味を知る旅~ 神山人海 @kamiyama4

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