第15話

シイが見つけた募集用紙を手に車へと戻る


「ねえねえ偉いでしょ?こんなにぴったりなものを一発で見つけちゃったんだから!」


ふふんと腕を組み鼻高々といった感じだ

確かにこれを見つけたのはシイの功績だから頭でも撫でてあげようか

彼女の頭に手を伸ばし頭をわしゃわしゃと撫でる

彼女の笑顔が先ほどとは比べ物にならないくらい明るくなり笑い声が漏れた


「にひひ、頭を撫でられるのも悪くないものね!もっともーっと撫でていいんだぞヒイ君?」


まるで雇い主のような言い方だ

こういうところも可愛いと思う

感情豊かで僕から見てもわかりやすくてそれでいて人懐こい、前世は犬だったんじゃないかと思うぐらいだ

手を引っ込め紙に記された場所を目指す

シイは名残惜しそうに僕の方を見つめている

ああ、捨てられた動物に後ろ髪を引かれるというのはこういうことなんだろう

操縦桿を握りペダルを踏み車を発進させた


この募集をやってみようと思ったのはシイが選んだからとか事故についての記載がなかったからとかそういうことではない

こういう内容だったからだ


≪声が出ない方募集≫

声の出ないそこのあなた、声を出してみませんか?

こちらの開発した発声装置によって声帯が死んでいても声を発することが出来ます!

ただし、現在実験途中のため完成させるための被験体になることが条件となります

報酬は装置を贈呈と金一封

期間は二日、一日に数時間拘束となります

基本的に自由に行動できますがこちらの指示を順守する前提でお願いします

場所は〇〇××まで

目印は赤茶の屋根に白い壁の施設です


これは僕のために貼られていたとしか思えない

もし声が出せたら今後は一人になった時でも人と話すことが出来るし筆談という手間が省ける

稼げて不便が解消されるのであれば願ったり叶ったりだ


しばらく走らせていると目的の場所が見えてきた

赤茶の屋根と白い壁の組み合わせが無くここだけだ

研究施設がそういった特徴を持っているわけではないみたい

他の家は赤や茶、青に緑といったものが多い

それに施設というには些か普通過ぎるというか他と変わらない間取りのような気がする

車を前に停め玄関の呼び鈴を鳴らした

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