第12話
「ヒイ、今は私とこのおばさんが話している途中なんだけど!」
「小さい割に口が減らないお子様みたいね。いつもこうだとお兄さんも困ると思うわよ。ねえ、お兄さん?」
間に入った僕に問いかけが飛んでくる
この行動が失敗なのは声を発せないからだ
逐一紙とペンを出して筆談する必要がある
だから咄嗟の質問や仲裁などに僕は無力なのだ
動きで声を出せないことを伝える
最初のうちは女主人も首を捻り僕のことを見ていたのだが数分経った時に合点がいったらしい
「お兄さんはもしかして喋ることが出来ないの?わかったわ、お嬢ちゃんをからかうのはこれぐらいにしておいてあげる。それで今日はどういったご用件かしら?」
「ちょっと、からかうってどういうことなの!?私は私への扱いに不服があって怒っているのだけれど!」
両手を上げ怒っている仕草をしているシイに近づき落ち着かせる
(まあまあ、僕らはお客としてきたのだから硬貨を売ったらこの店に寄らなければいいだけだし。なるべく騒動は起こさない方がいいと思うよ?)
「ううう、だってなんかいけ好かない!チビだのなんだの言われて。私だって一人の女性、立派なレディよ!それをお嬢ちゃんとか言ってるし!」
落ち着かせるのも一苦労だ
彼女の好きな物もわからないしどういったことで気が紛れるのかもわからない
とりあえず宥めることに徹する
(まだまだ成長段階だから大丈夫。これからもっと大きくなるんだ、小さい事は気にしない気にしない。)
「今小さいとか考えた?ねえ?考えたよね?ヒイまで私の事馬鹿にしてるの!!!」
逆効果だった
もうどうしたらいいのやら僕にはもうわからない
何か、何かないだろうか?
「お二人さんはここに何しに来たの?何もしないなら読書の邪魔になるから帰ってくれると嬉しいんだけど。」
前門の虎後門の狼といった具合に困り果てる
ああ、説明が大変だ
これから僕の右手が腱鞘炎になるほど文字を書くことになる
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