第11話
車でしばらく走ると教えてもらった質屋が見えてきた
一階建てで赤い屋根、表に『渡り鳥歓迎』の看板が出ている
どうやらこの店のようだ
「こんな乗り物初めて!まあ記憶がないから本当に初めてか分からないんだけどね?」
シイは頭を掻きながら可愛らしく舌を出した
それを見た僕は少しだけ、声にならない笑いが出た
他愛のないやりとりが嬉しい
そう思いながら扉を開け車から降り、それにシイもついてくる
走っていて町中を一通り見たのだが治安は悪く見えない
窃盗が無いとも言えないため一応鍵を抜いて持ち歩くことにする
入り口と思しき場所の前に辿り着いた
シイが扉を開ける
躊躇なく見えた道を進む彼女は本当に逞しい
中に入るとそこかしこに様々な国の調度品で溢れかえっていた
その奥に机がありここの主と思われる人物が本を読みながら紫煙を燻らせている
「あなたこのお店の人?」
シイが無邪気に質問する
扉の音は聞こえなかったようだが彼女の問いかけによってようやくこちらに目を向ける
僕はこれほどのものを集めているのだから長年収集をしている人だと思っていた
だからとても老齢でまるで賢者や仙人のような老人を想像していたのだ
しかしそこに居たのは若い女性だった
「いらっしゃい、気が付かなくてごめんなさいね。」
咥えていた煙草を灰皿へと置く
紅くて長い髪、切れ長の目を細めこちらを見ている
その鋭い眼光に僕は少しひるんでしまった
そんな僕をしり目にシイは足を進める
無邪気さ故なのかそれとも同性だからなのだろうか、先ほども思ったが逞しさは僕ら男性より上だろう
「ここは渡り鳥の持っている物を買い取ってくれるお店だって聞いたのだけど?」
「可愛いお嬢さん、間違いなくそのお店だけどあなたみたいなおチビさんだけだと売り買いは出来ないのよ?」
「あら、決めつけるなんてよくないのじゃないかしら?子供だとしても渡り鳥に変わりはないわけだし、後ろに兄が居るから売り買いは出来ると思うんだけど?」
なんで意味のない喧嘩がここで行われようとしているのだろう
頼むからいざこざは勘弁してほしい
見知らぬ土地だからというだけでなく、お店での喧嘩はこの後の売買に影響を与えかねない
仲裁に入ろうと足を踏み出し二人の間に入った
しかし僕は重大な事実を忘れていたのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます