第9話

指をさす、その先には先ほどの尻尾の生えた箱

あの不思議な箱へ注意を向ける

調べている間に真実を書いておこう

そのまま話が終わるのであればいい、終わらなければ見せて信じてもらえるよう努力しよう


「この箱が何?」


眠そうな顔から怪訝な顔へ変わる

僕の方を見ながら話を逸らしたい気持ちを見透かしたように疑いの視線を送られる

痛みが引いてきたため立ち上がり箱へ近寄る

痛いほど刺さる視線、それをなるべく箱へ注意を向けるために無視する

後ろへ手を伸ばし背後の尻尾を見せる

シイが近付いてきた


「なにこれ?尻尾?この箱から尻尾が生えてるの?」


思い通りに注意が逸れた

その先が棚と壁の間にある穴に刺さっているところを見てもらう

彼女の目を丸くしていた

次に箱に取っ手がついている

僕は握るのを躊躇った

何が起こるか分からないのだ、宿の主人に聞いてみてからの方が・・・


「中に何が入ってるのかしら?」


ガチャ!

箱を開ける音

目を剥き彼女の豪胆さに恐怖すら覚える

身を隠す暇も無く全開に開かれた

目を瞑り顔を反らす、僕に出来る防御反応はそれが限界だった

視界が暗くなってから数分かいや数秒だろうか?

しばらく何も起こらないので目を開ける

すると彼女が箱に食われているではないか


(シイ、大丈夫か!)


心の中で叫び彼女に駆け寄る

箱の中から冷気が漂ってきた

箱に収まった彼女の顔は首と繋がったまま中にあった

これは食われたというか突っ込んでいるのが正しい表現だろう


「あーひんやりしてて気持ちいいー、こんなものがあったらこの世は天国だよー。」


顔を出しながらのほほんとした感想を述べている

とりあえず生きている、心配をして損をした気分だ

ホッとする

それと同時に冷気が出ている場所が気になった


「この中から出てるみたい、気持ちいいから頭入れてみたら?」


その感覚を共有したいのだろう、同じことをするように促される

危険があるわけじゃなさそうだし試しに入れてみよう

縁に手をかけた時点で中から冷たい空気が流れてくる

この時点でここから出てきているのが分かるのだがシイを見ると目を輝かせ今か今かとこちらを見ている

仕方なく顔を突っ込んだ

冷たくて気持ちがいい、この世のものとは思えない箱だ

どこから出ているのかを見ると下の方に複数の穴が開いている

ここから弱く冷たい風が出ているようだ

これも発明から生まれたものだろう


「すごいでしょ!すごいでしょ!」


まるで自分の事のように誇らしげだ

腰に手を当て満足げな表情でこちらに聞いてくる

それに頷いて箱を閉めた


「この国は面白いものがいっぱいありそうね。もっと回りたいわ!どうせ三日間も滞在する予定なんだし早く行こっ!」


部屋の中を散策だけでなく町、そして国自体をもっと回りたいらしい

僕も興味はある

とりあえず受付へ降りて回るための方法を聞こう

それとこの国で使えるお金を手に入れないと

この宿はお金を取らないみたいだが他のところではそうもいかないだろうから

甲冑の青年に聞いた渡り鳥専門の質屋だか骨董屋へ向かってみよう

探索はそこからでも遅くはなさそうだ

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