第6話

彼の話はとても長くシイに至っては僕の肩を枕にして寝てしまったほどだ

意味のある話から意味のない話が入り交じり掻い摘んで話せば数分で終わると思われる話が青年が語れば数時間にも及ぶ超大作となっていった

なので僕が要約して説明しよう


数千年前、渡り鳥と呼ばれる起源の旅人が居た

名前をイト、彼は鳥を連れていて名前をゼイ

イトは身長が高くやや痩せぎすであった、白髪だが年は若く無口な男と伝えられている

ゼイはカラスのように黒く瞳の色は赤い、しかも人語を喋ったという

彼らは旅をしていたらしい

理由は伝えられていないが人探しだったか探し物だったか、各地に訪れては言っていることが違った

鳥を連れて国から国へ渡るから渡り鳥

いつの間にか彼が旅人の代名詞となり渡り鳥が通称となったとのこと

まとめるとこんな話だ

さて、彼の話に戻ろう


「いやあ、彼の話は面白くてね!この国での話は・・・」


意気揚々と話し続けていた彼はシイの寝顔を見ると急に表情が沈み申し訳なさそうに肩をすくめた


「すみません、好きな話だったものでつい熱心に話してしまいました。では書き終えた書類を見せてください。」


彼は僕たちの書類を持ち室内に備え付けられた電話を使い二、三言会話を交わし受話器を置いた

こちらに向き直り


「記入に問題はありませんでした。中に入ったら車を手配しましょう、妹さんも寝ていますし。」


青年の申し出に感謝の気持ちを込めて頭を下げる

シイは僕に頭を預け健やかに睡眠中だ

悲しいものだ、彼女が居ないと意思の疎通が難しい

前途多難だが僕たちを知る為には筆談を使いこなすしかないだろう

可愛い『妹』を抱き上げ青年について出口と思しき扉から外、いや中へと入っていく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る