第34話

「やっぱり無理よ、こんなの……」

 まごついていると、ジェラールはアンナを急き立てた。

「しょうがないな。手伝ってやるんだ、アンナ」

「わたくしが、ですか?」

「ほかに誰がいるんだい? この間の夜みたいに、お姫様を気持ちよくしてやれ」

 アンナはモニカの拙い自慰を見詰め、紅潮する。

「い、いらないってば! 自分でするから」

 咄嗟にモニカは下のガードを固めるも、そのために上が疎かになった。ウサギのアンナが憚らずに右から迫ってきて、モニカの裸乳にキスで吸いつく。

「あ――あふぁあっ?」

 たまらずモニカはしゃくりあげ、ウサギのお耳を振りまわさずにいられなかった。アンナの温かい舌がぬるりと突起にまとわりつくだけで、のけぞるほどに腰が跳ねる。

 すでにアンナは淫猥なムードに飲まれ、正気を失っているようだった。

「モニカ様、んぷあっ、ろぉぞ? 気持ちよく……ンッ」

 とろんとした顔つきでモニカに見惚れ、キスに熱を込める。

 同時にモニカの右手を取り、バニースーツの裏へと潜り込ませてもきた。彼女の巧みな指捌きに導かれ、モニカも徐々にコツを掴む。

「へはあぁ、らめ……そんなにしちゃ、あっ、あたし、また……!」

 だんだん何に対して抗っているのか、わからなくなってきた。火照った身体がは快楽を歓迎し、抵抗は言い訳がましくなる。

 なんで? ひとりだと上手にできない、のに……だめ、気持ちよくなっちゃ……!

 ひとりきりの夜に自ら慰めても、達することはできなかった。しかし今は身体じゅうが感度を高め、彼の視線ひとつにさえ疼きを漲らせる。

「ずっと我慢してたのかな? モニカはいやらしいお姫様だね」

「い、言わないで? あたしは……っひはあ? アンナ、も、もっと優しく!」

 意地悪な言葉を否定する余裕もなかった。それこそ『いやらしいお姫様』として、メイドのキスに悶えつつ、快楽に飲まれていく。

「姫様、お気を確かに……」

 傍で見ているブリジットさえ、ムードに飲まれつつあった。

「きみも手伝ってあげなよ、ウサギさん。お姫様にご奉仕してあげないと」

「ば、ばかな……わたしはそのような」

 言葉では拒絶するのものの、モニカの艶姿から目を離そうとしない。ごくりと咽が鳴るほど息を飲んでは、渇いた吐息をにおわせる。

「ブリジット? ほんとにだめなの、た、助けてぇ?」

 モニカが身じろぐと、まだ責められていない左の美乳が弾んだ。それがブリジットの獣欲に拍車を掛けたらしい。

「姫様、わたしはもう……うぁ、あ……」

 彼女の崇高な忠誠心が、獣じみた衝動に取って代わられるのを、モニカは目の当たりにした。ブリジットも覆い被さってきて、モニカの左の裸乳を頬張る。

「ひはぁああんっ!」

 右も左も敏感な蕾を吸われながら、モニカは自ら乙女の秘密を弄り、悩乱した。アンナの指を押しのけるように侵入を深め、快感を高めていく。

 おかげで脚が引き攣り、閉じられなくなってしまった。はしたない自慰を止められず、ねちゃねちゃと蜜をかき混ぜるさまを、ジェラールにじっくりと見物される。

「おやおや。仲のいいウサギさんたちだねぇ」

「んむぅ……もにひゃ、さま……」

 アンナは目を瞑り、一心不乱にモニカの突起を吸いあげた。ブリジットのほうは恥辱の涙を浮かべつつ、それでも丹念に舌を巻きつけてくる。

「ひめさま、っぷあ、お……おゆるひを」

 ついには快感が臨界点を超えた。モニカはしどけない顔つきで舌を出し、発情期のエクスタシーに酔いしれる。

「だめっ! あ、あたひ、これっ、えあ……へぇああぁあああーッ!」

 蕩かされるような恍惚感に飲まれ、全身が打ち震えた。瞳は悦びで満たされ、真正面のジェラールを愛しそうに映し込む。

 バニースーツは股座の一帯がびしょ濡れになっていた。網タイツも蒸れ、アンナ、ブリジットとともに牝のにおいをふんだんに漂わせる。

「……っはあ! はあ、ぁはあ……」

 のけぞりの姿勢からモニカが虚脱すると、アンナとブリジットも息を切らせた。

 満身創痍のモニカにジェラールが熱い視線を注ぎ込む。

「我慢できたのが不思議なくらいだよ。マゾウサギのお姫様」

 マゾウサギ。侮辱されたはずなのに、モニカの胸はさらに高鳴った。

 形はどうあれ、彼に求められることに女の部分が悦びを感じる。モニカの中で今、倒錯した愛が芽生えつつあった。

 アンナはくたっとモニカにもたれ、ジェラールを見詰め返す。

「ジェラール様もモニカ様も、わたくしのご主人様でございます、ので……」

「いい子だね。モニカのこと、よろしく頼むぞ」

 彼女ばかりジェラールに認められるのが悔しくて、無意識のうちにモニカはジェラールの手を取ろうとした。ところが、隣でブリジットが激しく咳き込む。

「げほっ、ごほ! き、貴様……よくも、わたしにこのような真似を!」

 我を取り戻したらしい。しかしジェラールは傲岸不遜な態度を改めなかった。

「きみが勝手にやっただけだろ? おれは『手伝ってやりなよ』と声を掛けただけさ」

「いけしゃあしゃあとッ!」

 ついにブリジットは激昂し、ウサギのお耳を足元に叩きつける。

「ブリジット? お、落ち着いて……」

「こんな男の肩を持つのですか? 目をお覚ましになってください!」

 もはやモニカの声も届かないほど、彼女は荒れた。憎きジェラールに人差し指を突きつけ、怒りの言葉を吐き捨てる。

「貴様は必ずこのわたしが締めあげてやる。必ずだッ!」

「フッ。期待してるよ。ウサギさん」

 父が残した遊戯室に声高らかに響き渡る、宣戦布告。

 まさかブリジット……ジェラールもどうして、こんなこと?

 うら若き騎士団長は義憤に駆られていた。

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