第33話

 そんな嫉妬さえふつふつと沸きあがってきた。

「ち……ちょっと待って」

「姫様?」

近づいてくるブリジットを制し、モニカも黒ウサギのボディスーツに手を掛ける。

「これは王女であるあたしの役目なのよ。だ、だから……」

 自分でも信じられなかった。ジェラールの気を引くためだけに、真っ白な美乳を曝け出し、その大胆さを強烈に自覚させられる。

 ジェラールはモニカの艶めかしさにこそ釘づけになった。

「アンナといい、きみといい……おれを喜ばせるのが上手すぎるぞ?」

 モニカの胸にはじかに手を伸ばし、弾むような独特の柔らかさを堪能する。

「あっ? やだ……んはぁ、ジェラールったら」

「マシュマロみたいだね。こうすれば、もっと大きくなるのかな」

 曲線は上からも下からも彼のてのひらで包まれた。桜色の突起を指で弾かれると、痺れは肩まで突き抜け、吐息が一段と熱を帯びる。

 ジェラールの囁きが耳に触れた。

「一番はきみさ。心もおれのものになりなよ、モニカ」

「だめよ……あたしは、っはあ、ソ、ソール王国のお姫様……なんだもの」

 気高い王女でありたい女の自分と、快楽に溺れていたい牝の自分とが葛藤する。

 ジェラールはモニカの反応を見逃さず、感度のよいところを集中的に擦り立てた。バニースーツのハイレグカットにも侵入の気配を近づけ、モニカを竦ませる。

 そこにアンナとブリジットの手も割り込んだ。

「おっ、お待ちになってください! ジェラール様」

「姫様もお気を確かに! このような男に身体を許すなど……」

 愛撫を遠ざけられ、モニカはもどかしさに息を切らせる。

「はあ、はぁ……う?」

 解放されたはずなのに、身体は疼きを漲らせていた。バニースーツから胸を曝け出しているにもかかわらず、汗をかくほどに暑い。

 おもむろにジェラールは席を立ち、ソファには三匹のバニーガールを残した。

「そうだね……じゃあ、一番おねだり上手なウサギさんを苛めてあげるよ。こっちにお尻を向けて、おれを誘ってごらん」

 モニカたちは一様に顔を赤らめ、尻込みする。

「さ、誘うって……?」

「わかってるくせに。王女を守れるかどうかは、きみたち次第ってことさ」

 中央のモニカ越しに、アンナとブリジットは目配せとともに頷きあった。ふたりしてソファの背もたれによじ登り、ウサギの尻尾を上に向ける。

「き、貴様が帝国の王子でさえなければ……」

「わたくしは構いません。ど、どうぞ? ジェラール様のお好きに……」

 反抗的なブリジットは悔しげに、従順なアンナは恥ずかしそうに赤面しながら、おずおずとウサギのお尻を差し出した。

ジェラールは遠慮なしにバニーガールの後ろ姿を眺め、唇をひと舐めする。

「いいねえ! アンナもいいが、強情なブリジットをへし折ってやるのも面白そうだ」

「……早くしろ。ただし、姫様には一切手を出すな」

 とうとう彼の手がふたりのお尻へと伸びた。しかしウサギの尻尾に触れるだけで、愛撫を始めようとはしない。ただ、真中のモニカには巧みにプレッシャーを掛けてくる。

「きみは見てるだけでいいのかな?」

「……っ!」

 ここで小さくなっていれば、今夜のところは凌辱から逃れることができた。だが、彼が自分以外の女で満足するさまなど、見ていられない。

「あ、あたしも……」

 淫らなムードにもあてられ、モニカは裸の胸をソファに押しつけた。アンナやブリジットとウサギのお耳を揃えつつ、ジェラールの前で懸命にお尻を浮きあがらせる。

「ほら、これでいいんでしょ? ジェ……ひゃああっ?」

「これを待ってたんだよ、モニカ!」

 すぐさまジェラールがモニカのお尻に掴みかかってきた。網タイツ越しに太腿を撫でまわしては、バニースーツの股布を指でなぞる。

 お尻にはキスを落とされ、腰から下が反射的に震えた。

「こっ、こら! そんないきなり……んはあ、激しくしないで……!」

 脚を閉じようにもこじ開けられ、乙女の香りを吟味されてしまう。モニカのお尻を好き放題に撫でながら、ジェラールは秘密の部分を躍起なほど嗅いだ。

「きみは本当に可愛いウサギさんだ。病みつきになりそうだよ、この柔らかさ」

 際どいところを舐められて、モニカは瞳に涙を溜める。

「やだっ? そんなとこ……」

「は、辱めるなら、わたしにしろ! これ以上の狼藉は」

 横からブリジットがお尻を割り込ませてきた。アンナもウサギの尻尾を揺らし、モニカとジェラールのスキンシップに嫉妬さえ見せ始める。

「ジェラール様? あの、わたくしにも……」

「ごめん、ごめん。ふたりだけで盛りあがってちゃいけないか」

 やっとジェラールはモニカウサギの股座から唇を離し、涎を拭った。

「お姫様に触られるのが嫌なら……よし、こうしよう。モニカ、きみが自分でやるんだ」

「はぁ、はあ……え?」

 半ば朦朧としていたせいで、彼の命令が理解できない。促されるまま、モニカは彼に正面を向け、呼吸のたびに汗みどろの裸乳を上下させた。

「じ、自分でって……なんのこと?」

「知らないとは言わせないよ。前にアンナにされたのを思い出して、自分で慰めたことがあるんだろ? それくらい気持ちよかったはずだよ」

「――ッ!」

 誰にも知られてはならない夜の秘め事が、モニカの羞恥心を燃えあがらせる。

 あの夜、アンナに散々弄られ、モニカは初めて『絶頂』を体験した。それを再現しようと、真似をしてみたことはある。

 いけないことと頭では理解し、己の行為を軽蔑しながらも。

「やったことなんて、あぁ、あるわけ……」

「いいや。それは『知ってる』って顔さ。で、上手にはできるのかい?」

 ブリジットだけはそれを知らないようで、首を傾げた。

「何の話だ? 姫様、どうされたのです」

 それをモニカに教えてしまったアンナは、浮かない表情で口を噤む。この場で自慰などできるはずもなかったが、ジェラールの威圧的な命令は有無を言わせなかった。

「できないなら、さっきの続きでおれがイかせてやってもいいんだが」

「や、やるわ! やるから……」

 彼にキスで荒らされるよりはと、モニカは覚悟を決め、スローモーションで乙女の部分へ右手を伸ばす。網タイツは薄いため、ほとんどじかに触れることができた。

 バニースーツの股布をのけ、ぎこちないなりに指を繰り出す。

「ン……は、はあ」

 とても見せられず、太腿を閉じあわせていると、注文をつけられてしまった。

「もっとよく見せるんだ。脚を広げろ」

 ジェラールの言葉に普段のような穏やかさはない。ワイングラスを片手にテーブルへと腰掛け、きびきびと言い放つ。

「おれにすべてを曝け出せ。でないと、満足できないな」

「は、はい……んふうっ?」

 アンナとブリジットが固唾を飲む中、モニカは稚拙に手首を返した。

 ひとりでも上手にできないのに、ひとに見られて、快感に耽られるはずもない。指の動きも要領を得ず、網タイツを擦るだけになる。

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