第32話
「まっ待て! 貴様、それ以上の狼藉は……」
「狼藉? これが、おれたちのデートなんだけどね」
ブリジットは癇癪を起こすも、ジェラールの悪戯めいた愛撫は止まらなかった。モニカもブリジットの手前、羞恥心を燃えあがらせながら、彼の手つきに息を乱す。
「ん、ぁはあ……ほんと、やめなさいったら? ジェラール」
「いい声が出せるようになったじゃないか。その恰好のせいかな?」
嫌がるつもりで抵抗しても、彼の興奮を煽るだけ。早くもボディスーツの裏へと侵入され、胸の膨らみを鷲掴みにされてしまった。
「ひゃうっ?」
麓から押し揉まれ、快感が閃く。
「ブリジットじゃ、こうはいかないだろうね。可愛いぞ、モニカ」
甘い囁きにも酔わされ、くらっとした。ブリジットよりも愛されている――などという女として優越感が、心ならずもモニカを高揚させる。
「んあぁ? ま、待って……ジェラ、っはあ」
「前みたいに『ラル』って呼んでくれないのかい?」
おかげで抵抗には必ず妥協がつきまとい、ジェラールの愛撫を受け入れるまでの時間稼ぎにしかならなかった。
遠慮がちにアンナがジェラールの右腕にしがみつく。
「あ、あのぅ、ジェラール様……モニカ様が困ってらっしゃいますので……」
「あれ? ひょっとして、きみもこんなふうにされたいのかな」
まるで図星を突かれたかのように、メイドの初心な小顔も朱に染まった。恥じらいの仕草もバニーガールの恰好では挑発にしかならず、ジェラールを強烈に惹きつける。
何もできないのは、正面で佇むブリジットだけ。
「ア、アンナまで……もうやめてくれ」
「ちょ、ちょっと、ジェラール? ブリジットがすごく見て……んふぁ」
べろりと頬を舐められるたび、モニカは色っぽく悶えた。白い肌は香汗にまみれ、発情期のにおいを漂わせる。モニカ自身が酔ってしまうほどに。
ジェラールはブリジットを冷めた表情で一瞥した。
「きみがモニカよりおれを楽しませる、だって? 騎士団長殿は口だけみたいだね」
「くっ……その汚らわしい手を、今すぐ姫様から離せ。外道め」
「モニカが嫌がるなら、ね。……そう見えるかい?」
耳たぶを優しく食まれ、モニカは女の快感に身体を打ち震わせる。
「ああっあぁ? そ、そこは」
「そこって、どこかな?」
さらに双乳の角を摘まれ、甘美な痺れにも襲われた。それこそ一匹のバニーガールとなって、ジェラールからの抱擁に充足感さえ芽生え始める。
ウサギたちの飼い主が淡々と命令を放った。
「さあ、モニカ。……胸を見せてごらん」
あたかも暗示のごとく頭に響いて、正常な判断をくだせない。ただ、その命令に従ってはならないことだけは、かろうじてわかっていた。
「だめよ、そんなの」
「へえ? だそうだが……きみはどうする? 騎士団長殿」
ジェラールに意味深なまなざしを向けられ、さしものブリジットもびくっと竦む。
「わ、わたしにどうしろと……」
「お待ちください!」
急に声をあげたのは、アンナだった。
「わたくしがお見せしますので、どうか……姫様にはご容赦のほどを……」
もじもじと躊躇いがちではあるものの、頬を染め、自らバニースーツに手を掛ける。そして深呼吸を挟むこと、二回。
三角形の生地は呆気なくずれ、艶めかしい美乳が露になった。
「へえ……」
モニカを抱き締めながらも、ジェラールはアンナのあられもない姿に生唾を飲む。アンナはバニーガールの大胆さとメイドの繊細さを兼ね備え、濃厚な色気を醸し出した。
先を越され、モニカは密かに困惑する。
まさか、いきなり脱いじゃうなんて……ジェラールも真剣だわ……。
まだジェラールが下劣な表情を浮かべるなら、嫌悪のひとつもできた。しかし彼は感心さえして、アンナの健気な献身ぶりを称える。
「最高のメイドだよ、きみは。だからこそ、ぼくもモニカをきみに任せられる」
「お、お褒めいただくようなことでは……ございませんので」
これでリードを取ったアンナだったが、奥ゆかしさを疎かにすることはなかった。ジェラールに差し出すように胸を寄せあげる一方で、真っ赤になってしまった顔を逸らす。
「そうだね。きみの頑張りに免じて、モニカは勘弁してあげても……」
「ま、待て!」
何もできないプレッシャーに耐えかねたのか、ブリジットが踏み込んできた。モニカともアンナとも目を合わせるに合わせられず、唇を噛む。
「……ブリジット?」
「姫様はおろか、アンナにまで無理をさせては、騎士の名折れだ。……ジェラール、そんなに女の胸が欲しければ、わたしのもので満足するがいい」
その両手がボディスーツの脇腹へと親指を差し込んだ。黒光りする生地はずれ落ち、小振りなメロンほどある豊かな裸乳がたわわに弾む。
魅惑のサイズにジェラールは目を見張った。
「大きいじゃないか。モニカも見てみなよ。すごいと思わないか?」
「え、ええ……」
彼に加担するつもりはなかったが、モニカもブリジットの巨乳ぶりには感服する。
赤面ししつも、ブリジットは意を決したようにソファへと歩み寄ってきた。ジェラールの左に腰を降ろし、もどかしそうに網タイツの太腿を擦りあわせる。
「これでいいのだろう? ひ、姫様は解放しろ……」
「わたくしのこともお好きになさってください。ですから、モニカ様だけは」
負けじとアンナも前のめりになって、双乳を揺らした。
今まで余裕ぶっていたジェラールのほうが狼狽し、声を上擦らせる。
「ま、待ちなよ。そんなふうに迫られたら、おれだって我慢の限界ってやつが……」
彼の腕に抱かれているにもかかわらず、一転してモニカの立場は弱くなった。
このままおとなしくしていれば、自分は胸を出さずに済む。だからといって、アンナやブリジットをジェラールの凌辱に晒せるはずもなかった。
同時に――彼の瞳がふたりの艶姿で満たされているのが、無性に悔しい。
あなたが欲しいのはあたし、でしょ?
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