第91話 PERFECT ANSWER、その2~魂の呪縛と解放~

「それで?その対策ってのはどうするんだ?」




ホレスがぶっきらぼうに聞いてきた。


どうやらホレスは自分が、ただ“動くな”と命令されただけで動けなくなる未来が気に食わないようだった。




「簡単な事よ。貴方達は自分の親であるギルゴマから命令されて、動けなくなる。これは魂に組み込まれた本能だから仕方ないのよ。でも、私達は上位者であるギルゴマから命令されても動けるわ。これは命令の系譜が違うからなのよ。私達は地球の管理者であるルクレシアの系譜。だから、ギルゴマの命令にも逆らえる。つまりは…貴方達も系譜を変えれば良いのよ」




アルファはあっさりと言った。


しかし、他の者達には、その様な事が簡単に行えるとは思えなかった。




「系譜を変えると言っても、勝手に変えられる訳ではないのでしょう?系譜の、親となる存在が必要なのではありませんか?」




レーナが当然の質問をした。




「そうね、本来であれば第四世代の身元引受人が必要ね。でも、今回は特別なのよ。何しろここに代理権限を持つ第五世代が二人揃っているから」




そう言ってアルファは自分とベータを指さした。




「つまりアルファとベータが身元引受人となって、みんなをルクレシアの系譜に変えるって事か?」




カナタが呆れたように言った。




「そういう事ね。こう見えても私達は二人揃ってならば、かなりの代理権限を行使できるのよ」




そう言ってアルファは胸を張った。




「ようするに、黙って養子縁組するような物か」




アルファの言葉を聞いたカナタが、的確な表現をした。




「ま、そんなところね」




アルファは肩を竦めてカナタに答えた。




「それでギルゴマの命令から逃れられるのですか?」




アリシアが不安そうに聞いた。




「えぇ、少なくとも魂の呪縛からは逃れられるはずよ。ただ、本能が恐れる事まで逃れられる訳ではないわ。アリシア、貴女は自分自身の心で恐怖に立ち向かう必要があるの」




アルファは優しくアリシアに言った。




「…大丈夫です。私が恐れたのは、このまま何の役にも立てずに終わってしまう事。みんなのお役に立てるのならば、怖くなんてありません」




アリシアはそう言って全員の顔を見渡した。




「よし、もう大丈夫そうだな」




カナタはそんなアリシアの様子を見て、笑って答えた。




「はい!教官」




アリシアもまた笑顔で答えた。




「じゃあ、作戦を説明するわね。まず、ギルゴマが動くなと言ったら、貴方達三人は動けなくなった振りをするのよ」




アルファが作戦を説明しようとしたが、途中でカナタが口を挟んだ。




「あぁ、ちょっと待ってくれ。その前にギルゴマへ偽の情報を流すとしよう。ハイヴィジョンを通して作戦の相談をするぞ」




カナタは意地の悪そうな不敵な笑みで、全員に向かって言った。




それを聞いたパーティーメンバーは、さすがはカナタだと思うと同時に、この男だけは敵に回したくないと心の底から思ったのであった。


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