第90話  PERFECT ANSWER、その1~アリシアの役割~

「みんな、これから作戦を伝えるわ。全員準備して」




カナタがアリシアへ、戦線を離れるように命じようとした直前、アルファからメッセージが届いた。




「待て、ここで作戦について話し合うのは不味い。ギルゴマにも聞かれている可能性がある」




アルファの呼びかけに応じた時、カナタはすぐにギルゴマの盗聴を不安視した。




「大丈夫。これはグループチャット」




しかし、ベータがすかさず答えた。




「安心して。このメッセージはグループチャットを経由して話しているのよ。そして、これは、そもそも魔法では無いの。元々は神眼に備え付けられた機能なのよ。招待されていない者は、例え管理者であっても話の内容を聞くことはできないの。情報が漏れる事はまずあり得ない。このグループチャットに対しては管理者ですら、外から干渉は出来ないから大丈夫よ」




アルファがベータの言葉を補足した。




カナタはホッと息を吐いて、作戦について質問をした。




「それで、どんな作戦なんだ?最初に言っておくが、おそらく、アリシアは今後、戦闘では役に立てないと思うぞ」




カナタはハッキリと言い切った。




「そんな事はありません!」




アリシアはカナタに反論した。




「確かに私の直感は、今すぐここから逃げ出すように言っています。でもそれは、決して臆したからではありません!」




アリシアは泣きそうな声でそう言った。




「分かっているさ。俺が自分の直感を優先しろと言ったのだからな。だが、今、問題なのは、その本能にアリシアが抗えるかどうかだ。ここから先は、“多分”や“きっと”などと言った希望的観測が通用する次元で無いんだ」




カナタは無情にもアリシアへ現実を突きつけた。




しかし、この言葉に対して反応したのは意外な人物だった。




「アリシアにはアリシアの役割がある」




ベータがそう断言した。




「うん、これから立てる作戦はアリシア次第と言っても過言では無いわね」




アルファもアリシアを擁護した。




「…何を企んでいる?」




カナタは二人の言葉に疑問を抱き、質問をした。




「簡単な話よ。つまり、今までは私達の能力も不足していたし、ギルゴマの真の能力も未知だった。だから私達は確定した未来のシミュレーションを行えなかった。でも今は、カナタだけじゃなく全員が…」




アルファがそう言って全員を見渡した。




「俺達も覚醒して、力を増した」




ホレスが目を輝かせて言った。




「私達も、そのシミュレーションに加わる事が可能になった、と言う事ですか?」




レーナは思案するように言った。




「その通りよ。ただし、ギルゴマの気を引く必要があるわ」




アルファは頷きながら答えた。




「それが、アリシアの役割か?」




カナタもここでようやくアルファ達の企みに気が付いた。




「アリシアは天性の女優」




ベータが端的に事実を述べた。




「え、私ですか?」




アリシアはキョトンとした表情で聞いてきた。


どうやらまだ状況を把握していないようであった。




「私とベータで、少し先の未来を視て来たわ。ギルゴマはしばらく私達の様子を伺うの。それはすでに確定した未来。その後、貴方達はギルゴマから〝動くな〟と命令されて、身動きが取れなくなるわ。…このままだとね」




アルファが確定した未来を宣言した。




「でも、幸いなことに、事前にそれが分かっているのなら、対策はあるのよ」




そうしてアルファは、これからの作戦について説明を始めたのだった。


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