第92話 PERFECT ANSWER、その3~完璧な答え~
「アリシア、良い演技だったわよ」
アルファが珍しくアリシアを褒めた。
「ホレスは最悪」
ベータがホレスにダメ出しをした。
「くっくっく、まあ、確かに棒読みではあったな。ギルゴマにばれるんじゃないかと冷や冷やしたぞ?」
カナタが笑いながら感想を述べた。
「レーナは敢闘賞」
ベータはレーナにも感想を言った。
どうやら健闘したとの評価のようだった。
「まあ、レーナは及第点ってところね」
アルファも笑いながらレーナの努力を認めた。
「それにしても、偽の作戦にしては随分と本格的な作戦ですよね?このまま黙ってギルゴマに“クロスファイヤー作戦”を仕掛けても、上手く行ったのではないですかね?」
アリシアがカナタに質問をした。
「あぁ、アリシアが動けるようになった今なら、八割以上の確率で成功しただろうな」
カナタはあっさりと自ら立てた作戦を評価した。
「おいおい、じゃあ何もギルゴマに態々教えなくても良かったんじゃねぇのか?」
ホレスが呆れたように言った。
「いや、俺達が目指しているのは、完璧な作戦だ。お前達の誰一人欠けることなくギルゴマを倒す。その完璧な答えを求める為の時間が必要だったのさ」
カナタは肩を竦めて答えた。
「今からその答えを求める為のシュミレーションを行うって事ね?」
レーナが質問とも自問自答とも取れるような事を言った。
「その通りだ。だがその前にギルゴマには更に油断してもらう必要がある。その為のシュミレーションをアリシアには今から行ってもらう。どんな質問をしたらギルゴマが最も油断するのか、アルファとベータに協力してもらって、ギルゴマを最後まで騙し切る演技を練習するんだぞ」
カナタはアリシアに檄を飛ばした。
「はい、教官!…ってあれ?教官たちはこれから、どうするつもりなんですか?」
「俺達は、これからギルゴマの気を引くために一勝負してくるさ。ギルゴマがお前達に“動くな”と命令を出して油断してから、俺達はシュミレーションに入る」
「えっ?それじゃあ私はもしかして…一人だけ何もしない事になるのでしょうか?」
「あぁ、まあ、客観的な世界からはアリシアはただ元の場所でボーっと突っ立っているだけに見えるだろうなぁ」
「そっ、そんなぁ」
アリシアは項垂れてしまった。
「ついでに言っておくけれども、カナタ達がシュミレーションに入ると同時にアリシアには元の世界でギルゴマの相手をしてもらう事になるわよ」
アルファが残念な知らせをアリシアに伝えた。
「それじゃあ私は全く活躍出来ないじゃないですか!」
アリシアが抗議の声を上げた。
「馬鹿、この作戦はアリシアの演技に全てが掛かっているんだぞ?頼むから完璧な答えを出してくれよ?」
カナタはアリシアに向かって真剣な表情で言った。
「…分かりました。教官達もどうかお気を付けて」
アリシアはガッカリとした表情を見せながらも、納得したように答えた。
「ねぇ?ところで、完璧な答えを求めているはずのカナタに質問なんだけど…。なぜ貴方はたった一人であの大軍勢の中に飛び込んでいったの?あの時点では貴方がカナの元へ辿り着ける保証など無かったはずでしょう?そんな賭け事のような真似をするのは貴方らしくないと思ってずっと疑問だったのよ」
アルファはこれがカナタへ質問をする最後のチャンスかもしれないと思い、自分の疑問を聞いた。
「全く、何を言っているんだか…アルファもベータも、自分達の能力をもっと信じたらどうだ?俺は随分と昔にハッキリとベータに言われたぞ。“あれが、あなたの命を奪うモノ”とな。ベータの言葉は絶対だ。つまり俺は、ギルゴマに出会うまでは絶対に死なないって事だろう?」
カナタはあっさりと二人を驚かせる答えを言った。
「つまり、逆を言うなら。ギルゴマが現れるまでは、絶対に自分は死なないと考えていた、って事ね?」
アルファが呆れたように正解を述べた。
「あぁ、何が起きるかまでは分からなかったが、それだけは確信していたって訳さ」
カナタは、こんな事は何でもない、と言った態度で答えた。
「…馬鹿…」
ベータはボソリと呟いた。
しかし、その顔はいつもの不愛想な表情ではなく、ハッキリと笑顔を浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます