第11話 決戦前日譚、その1
「ペーター、ご飯よー」
優しそうな母親の声が道具屋の二階に響いた。
「ペーターのやつ、最近どうなってんだ?飯時になっても降りてこねえじゃねえか?」
頑固そうな父親が心配そうに聞いた。
「何でもヴィジョンとか言うのに夢中らしくてね、まあ宿屋の兄弟も同じだそうよ。今日女将さんがボヤいていたよ。ヴィジョンが始まったら手伝いにもならいって」
「あぁ、例の冒険者パーティーか随分と評判が良いらしいな」
「まあねえ、あたしも何度か見たけども、あれを見たら子供たちはみんな冒険者に憧れるだろうねぇ」
「なんだ、そんなに面白いのか?」
「なんだい、あんた見た事なかったのかい?」
「ああ、最近忙しかったからなぁ」
「…見ない方が良いよ。あんたもきっと夢中で見ちまうクチさ、そうなったら仕事になんなくてあたしたちゃおまんま食い上げだよ。ペーター!いい加減に降りてきな!」
母親が痺れを切らして怒鳴った瞬間二階から転げるようにペーターが降りてきた。
「大変だ!明日、大戦闘が起きる!!」
ペーターは大きな声で叫んだ。
「一体何の話だ?」
両親は驚いた顔をしていた。
「いいから!ヴィジョンを見て!今すぐに!!」
今日、世界中の家庭で職場で学校で似たような会話が交わされた。
曰く、明日の戦闘はやばい。明日は誰かが死ぬ。
明日もしかすると人類は滅びるかもしれない。
とにかくヴィジョンから目を離すな。
明日、何かが起きる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます