第2話 その頃、仲間たちは…

「ベータ、これはどういうことだ!」





見るからに頑丈そうな鎧を着た騎士が、兜を脱ぎ捨てながらベータに怒鳴った。


兜の中からは怒りに燃えた赤い目と赤い髪が現れた。


パーティーのタンク役を引き受けていたホレスだ。





「アルファお前も知っていたのか?」





アルファとベータは双子の姉妹だ。その疑問は当然だった。





「知る訳ないでしょう!私が聞きたいくらいよ!」





そう言いながらアルファは杖から極大魔法を結界に向かって打ち出した。


しかし、その魔法は結界によって虚しくかき消された。





「ち、さすがにあいつが本気で掛けた結界魔法ね、小揺るぎ一つしないわ。ちょっと、ベータ説明してもらうわよ」





アルファは髪の色だけが違う、自分と同じ顔をした双子の妹を睨んだ。





「そうですよ!なぜここまで来て、急にこんなマネをしたんですか?!」





アリシアは泣きそうな顔をしていた。


彼女は自分こそが彼の一番弟子だと思っていた。





「やっぱり裏切られた。いつか必ずあの人は裏切ると思っていた」





暗い表情でレーナは言った。


このパーティーで唯一彼を面と向かって批判していた彼女には、当然の反応だったかもしれない。





表現は様々だが、全員が思っていたことが一つだけあった。


ここで自分は彼と共に命を懸けて戦うのだ。


その為に今まで頑張ってきたのだ。


ここであの勇者を救うために我々はパーティー組んだ。


そう全員が信じていた。





だが実際は彼一人が勇者を救いに行った。


自分達を置いて行ってしまった。


これを裏切られたと思わない者などいなかった。





そう彼ら彼女らはここで彼と共に命を懸ける事を誇らしいと思っていたのだ。


だからこそショックが大きかった。





ベータは全員から問い詰められていたが、狼狽える事もなくいつもに増して不愛想な表情をしていた。





「私も知っていた訳じゃない、でもあいつの性格を考えれば予想は出来たこと」





不満そうな顔でベータが言った。





「そもそもあいつがここで死ぬことは初めから分かっていた事。そんな戦いにあなた達を巻き込まないようにする事くらい先読みすべき」





「ちょっとまて、あいつがここで死ぬだって?」





ホレスはそんなことは初めて聞いた。思わず周りを見回す。


するとアリシアとレーナはホレスと同じように驚いた顔していたがアルファだけは違った。





「アルファは知っているようだな、そこから説明してもらおうか」





ホレスから言われ、アルファは口数の少ない妹を睨みながら答えた。





「ベータが先読みや予知の力を持っている事は知っているでしょう?その力で最初から分かっていたのよ、今日が彼の死ぬ日だという事は…いいえ少し違うわね、彼がこの世界に来た日、運命が決まったのよ。彼は今日この日に死ぬ、そう運命づけられたの」





アルファは諦めたように言った。





「でもあなた達の運命はベータの予知でも分からなかった。このたたかいの後、生きているのか死んでいるのか…ただ正直な話、私とベータ以外はほぼ確実死んでいたと思うわ、予知は出来なかったけど、ベータがシュミレーションはした、結果は良くて一人生き残るかもしれないそんな分の悪い確率だったのよ、そうでしょ?ベータ」





そう言ってアルファがベータの方を見たするとベータは焦点の定まらない目をして空中を見つめていた。





「あなたもしかしてあいつの目をハッキングしているの?」





「初めに言ったはず、色々と仕掛けて置いたと」





「ちょっと!私にも見せなさいよ!」





「別に勝手に見ればいい。周波数はいつものヴィジョンより感度の高い周波数。だからハイヴィジョンと唱えるだけ」





それを聞いた全員がハイヴィジョンの魔法を唱えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る