第8話 途中下車、彼女の乗換駅。
早瀬薫は、僕の知らない間にいじめを受けるようになっていた。理由を深くは知らない。後になって話を聞くと、彼女の手首にまかれた包帯が気持ち悪かったからだそうだ。そんな理由で、と大人は思う。それでも、高校生にとって、普通と違うことはどれだけ不気味で奇怪か。手首に巻かれた包帯が、どれだけの嫌悪感を生むか。彼女は完全にしかとをくらっていた。もともと話をするようなタイプでもなかったけれど、必要最低限の会話でさえ起きなくなった。それだけじゃない。
彼女の靴は頻繁にゴミ箱の中で見つかった。彼女はタフなのか、先生に頼ることなく、全て自分一人で靴を拾い上げて汚れをティッシュで拭き取っていた。僕はそんな彼女を見て、何もしなかった、出来なかった。怖かった。彼女のように、僕がいじめられることが。彼女の仲間だと思われることが。
それでもステージの彼女は幾度となく観に行った。彼女が少し長めの手袋をつけだしたこと理由を知っているのは僕だけだという優越さえ感じていた。
特典会で僕は彼女に聞いた。
「大丈夫なの?学校では」
「学校?私はアイドルよ、ステージで生きてるだけ」
彼女は強かった。いや、僕が勝手にそう思っていただけなんだけれど。
ある日、彼女が突然生配信を始めた。深夜になる前、最終電車が来る7分前、駅構内からだった。
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