第4話 鷲の停車場、天国で流行る歌

 ただ電車に揺られる。星空は綺麗だった。鷲の停車場に停まる。本で読んだ通りだった。この鉄道は、サザンクロスに向かう。その先のことは、わからなかった。アルビレオの観測所近く、検札を受けた。僕と彼女のチケットは全く同じものだった。サザンクロスに着いた先、僕らはきっとこのままずっと一緒にいられるのだと、そう思えばこの先のことは何も怖くなかった。

 彼女が僕に尋ねた。

「人は死んだら何になるんだろうね」

「なんだっていいよ。このまま僕らはサザンクロスに向かうんだろう?その先、僕らは天国に行くんだよ。なににもならない。消えて無くなる、その先のことは考えなくていいんだ」

「人は死んだら星になるって聞いたよ。君の星は綺麗だろうな。体とか随分大きくなってるけどさ、その綺麗な目だけは変わってない。ピストルスターを越える綺麗な星になれるんだろうね。いいなぁ」

 彼女は笑う。僕からすれば、君は既に綺麗な星だった。君が宇宙のどこかで美しく輝いて、それをどこの誰だか知らない天文学者が発見して、くだらない名前をつけるくらいなら、たとえこの鉄道がサザンクロスについても、決して降りず、一生、このまま、車内に残っていたい。宇宙が消えてなくなるとの我慢比べくらいしてやる。そうでもしないと、僕は報われない。

「天国に行くか星になるかならどっちを選ぶ?私は天国かなぁ、天国ならまたアイドルできそうじゃん。天国ってどんな歌が流行ってるんだろうね。やっぱり教会っぽい歌なのかな」

「既に救われてるんだろうし、賛美歌は歌わないでしょ。もっと激しいのが流行ってるかもよ。地獄を感じられるような、そういうの」

適当に返事をした。鷲の停車場からゆっくりと列車が動き出す。ジョバンニ達がここで聞いた蠍座の話は、『よだかの星』と似たものを感じさせるから好きだ。誰かのために命を捨てる、誰かを傷つけたくないから命を捨てる。僕にはそんな大義はない。ただわがままにこの鉄道に乗り込んだだけだった。

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