第23話 わし、チームで常に動くことにするが彼はどうするのだろう

「なんだよ、結構やるじゃねぇか」


超大型のバスターソードを[リテイク]でナイフに変え、懐にしまいつつ隣にいるジムに賞賛を贈る。ついこの瞬間まで彼らは魔王軍六天王の一人であるヘルスケルトンとの死闘を演じていた。ヘルスケルトンは身軽な身体を生かし、高速で動き回るファイターであったがジムの仲間であるアリサと青年のスキルに助けられ、ヘルスケルトンの動きを制限。そのまま〔あ〕とジムがバスターソードでヘルスケルトンを砕き、見事撃破。なんとか障害を乗り越えたのた。


「ハハ、当然だ。六天王との戦いは始めてだったが案外ちゃんと観察すれば突破口は開けるもんなんだな」


「どれだけ強いやつでも抜け道はちゃんと用意されてるってことよ」


確かにヘルスケルトンは強力なモンスターであった。だが強力に見合った弱点が存在した。運営は、しっかりと敵を見極めることが出来れば必ず突破できるよう作ってくれていたのだ。まぁ、さすがにあの速さで耐久も兼ねそなえていたらほぼ無理ゲー。〔あ〕は即クソゲー認定していただろう。


少し荒れた息を整える〔あ〕とジム。たとえゲームでもグランドワールドは疲労を忠実に再現する。二人とも余裕そうに話しているが実際はどうなのか。


「はぁ……俺は少し疲れたぜ……。こう倒せたのはアリサ、カイ。お前らのサポートもあってだぞ。ありがとうな」


〔あ〕を守った剣使いの少年はカイという名前らしい。彼ずっと無口だったがその口元は緩くなっており、ジムとは逆の方を向いていた。どうやら意外と照れ屋らしい。


アリサもやってやったと言わんばかりに張る程でもない胸を張る。その様子に少し安堵を浮かべているジム。彼らにとってはいつもと同じことなのだろう。ずっと一人だった〔あ〕には少し微笑ましく見えた。


「そんで、どうだ?〔あ〕よ。俺達と共に進むか?それとも前のように一人で進むか?」


地面に尻と手を付きながら座っているジムが問う。


「………」


「まぁ、君には僕がいないとさっきみたいに危なくなるっしょ」


カイは〔あ〕を見ながらニヤニヤしている。


「ば、馬鹿にすんなよ!……素直に感謝はしてやるがよぉ……」


自分の弱さを認めまいと声を高くするが、なんだかんだいって〔あ〕は助けられたことに感謝していた。「はぁ……」と一つため息をつく〔あ〕。


(仕方ねぇか。これから先にはヘルスケルトンよりも強いやつも出てくるだろうしなあ。ここはいっちょ、この船に乗ってやるか)


自らの未来を動かすであろう選択を決断した〔あ〕は強く握りしめた拳をジムの前に突き出す。その時の顔は何かを楽しみにしている子供みたいな笑顔だった。


「ハハッ、分かってるじゃねぇか!」


ジムも笑いながら拳を突き出す。二つの拳は重なった。


「男の友情物ってのは大抵こんな感じに合わせるらしいからな。あんたもこういうの意外と好きか?」


「まぁな。そういうお前こそ意外だぜ?お前はてっきり一人で突っ走っていくタイプかと思っていたが」


「そうかもな。だがこんな風にみんなで楽しんでみるってのも悪くないだろ?せっかく手に入れた人生なんだ。満足しようぜ」


気づけば、二人で合わせていた拳は開いており、カイとアリサも加わって手の平を上に重ねる形になっていた。


「仲間が増えるともっとゲームが楽しくなるよ!〔あ〕君、一緒に頑張ろうね!」


他の三人に劣らないとびきりの笑顔を見せるアリサ。その様子に〔あ〕は少し頬を赤くしていた。


「さっきは悪びれた言い方をしましたが、僕も仲間が増えるのは歓迎です。一緒にこのゲームも楽しみましょうか」


〔あ〕は最初、カイが常にマウントでも取ってくる嫌なやつかと思っていたが本当はただゲームを楽しみたい一人のプレイヤーだということを知り、安堵した。


「よっしゃ!盛大に楽しんで俺達が魔王共を倒してやろうぜ!」


「「「おう!!!」」」


この日、〔あ〕にはこれからこの世界で共に戦っていくであろうとても頼もしい仲間ができた。結局、みんなゲームを楽しみたい人間の集まりなのだ――――――――――――。













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