第12話 わし、考える

うっす。田中です。いつも通りの前回のあらすじでございます。Dナイトを倒し、安心していたAを襲う勇者〔あ〕。彼も多重スキルの使い手であり、苦しめられるAであったが最終的には引き分けという形で勝負の幕は降りたのであった。

〔あ〕の発言には色々と謎がある。Aは考える。これから先のことを。では、頑張ってくれ。




〖〗

「わし、宿へ帰還」


色々と大変な1日だった。魔王軍幹部の1人であるDナイト。正体がよく分からない謎の勇者〔あ〕。


そんなやつらと連続で戦ってよく生きて帰ってこれたと思う。自分で自分を褒めたくなる。


Aは買ってきた夜飯であるカップラーメン醤油味を開封。お湯を注ぐ。3分間静かに待つことにした。カップラーメンの器から漏れ出てくる匂いがまた良いのだ。カップラーメンはその辺で外食をするより安くすみ、なかなか美味しい。ただ、毎日食べていると健康にも良くないため食べるなら週1という感じだ。


布団の上に転がる。とても眠くなってくるがラーメンを食べるまでは寝るわけにはいかない。なかなか疲れはしたから食べたらシャワー浴びて、歯を磨いたら寝る。ふと、今日の〔あ〕の発言を思い出す。


―――俺はお前の兄弟だからだ


――2週間。それがこのゲームの残り時間だ


「兄弟ねぇ。そんなことはまず有り得ないんだがなぁ。やつがふざけて言っているのならいいがよく分からん。次会った時に問い詰めてやるぞい」


そして残りの2週間。このグランドワールドが文字通り終焉を迎える時間。

〔あ〕は運営の自主的サービス終了によって終わるのではなく自らの手でこの世界を終わらせたいらしい。魔王の死はこのゲームの最終目標であり、それもサービス終了の理由になる。


この世界を破壊したいAからすれば願ってもいないことだがここで1つの疑問ができている。


(わしはこの世界を乱すために意志を持ち、プレイヤーキルなどを行ってきた。これは勇者に対しての復讐であるため問題はない。

だが魔王に対しての復讐。モンスターも無論敵じゃ。でもそれは普通のプレイヤーと同じではないのか。魔王を倒すという行為は勇者と同じことをしているに過ぎない)


結局最終目標は魔王討伐。勇者と同じ道へ繋がってしまうのだ。


「さて、どうしたものかねぇ」


わしが選ぼうとしていた道をちゃんと歩いているのだろうか。…………………………。だが確かなのは進むしかないということ。わしが意志を持ったのはこの世界を乱すためなのは分かっている。だが、もういいじゃないか。意志を持った以上、これからのことはわしが決めることなのだ。やっぱり迷うのはよくない。


「わしは…………………」


心の底から思ったことを吐く。


「このまま魔王を倒す!そして今まで通り勇者共も殺す!同じ道に繋がる?いいじゃないか!それはわしの道だ。自分が進みたいと思った方向を歩いていけばいいんだ」


これが出した結論である。もうこの意志が揺らぐことはない。頑張るぞ、わし。負けるな、わし。……………はあ、結論を出したらなんだか心に余裕が出来た気がする。


そろそろラーメンの食べ頃か。そばにお湯を入れて3分経ったラーメンが置いてある。それを手に取り食べ始める。とても温かい。今日感じた苦労が全て熱で蒸発されていくようだ。あー、美味い。


また明日苦労するかもしれない。それでもわしは、その苦労を感じながら前へ進んでいくと思う。なぜなら、それがわしの決めた道というやつだから。それがわしの意志を持って決めたものだから――――――。










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