第4話 わし、魔王に狙われる

やぁ僕はタ・ナカ。いつも通り前回のあらすじを言う訳だが、特にそれといった進展はないよ。一応話すと、村人Aはまともな装備を手に入れることができました。以上!皆解散!








〖〗

「社長!まずいですよ!新規プレイヤーが全然入って来ません!」


「何!?今まで確認してなかったが、まさかそんなことになっていたとは………。原因はやはりあの村人Aとやらだろう?」


社長と呼ばれた男は聞く。そう。あの田中を解雇したあの自分勝手な社長だ。彼らグランドワールドの運営。そして社長。今、彼らは会社の存続が危うく、危険な状態なのだ。


「はい!その通りです!村人Aが初心者を狩り続けているため、新規プレイヤーは怖くて先の街へ進みたくないようです…」


「もうAは第3の街まで行ったと前に報告がされただろう!ならもう進んでもいいはず!何を怯えているのだ!クソ共め!…………。おい、あいつはどうした?」


「はあ?あいつとは?」


職員が聞き返す。


「グランドワールドの魔王役を任せたやつがいただろう。運営があの世界に干渉するのは出来るだけさけたい。だか、奴ならどうだろう?奴にはモンスターを操ることのできる権限を与えてある。そいつに任せる」


「分かりました。彼は今食堂にいるはずです。呼んできます!」


職員が走って部屋を出ていく。


「ふふふ、村人Aよ。モンスター共で片付けてやるぞ」


社長の策略ができたことは勿論Aは知るよしはない。








〖〗

ここはVRMMOのゲーム、グランドワールドの第3の街付近の森である。森の中では金属の打ち合う音。今ここでは1人の男が数々の人をなぎ倒している。


「甘いぞ」


「ウッ!!」


ドサリ。そして倒れた者は消えていく。


「ほれ、次じゃ。かかってこいや。どうせ逃がさん」


闘争心を煽られた者が次々と男に向かって走りだす。


「どりゃァァァ!!」


「ふんっ!」


男は手に持つ刀で相手の剣を受け止める。そして、一瞬で剣を弾き、少し後ろへと下がる。その時、男にはクナイが握られていた。剣を弾かれ、バランスを崩した相手に投擲。


「がァ!!」


喉にクナイが突き刺さる。これは即死判定だ。クナイが刺さった体は光の結晶となり消えていった。だが、安心は出来ない。まだ3人ほどがこちらへと向かってくる。


「ふう。では次はこれでいくとしよう」


男は刀を鞘に収め、スキル[肉体強化]とスキル[加速]を使う。そして拳法の構えをとる。


「よくも仲間を!このクソ野郎が!」


「うぉぉぉぉ!」


「くたばれやぁ!」


同時に剣を振り下ろしてくる。男は滑らかな動きで剣を避ける。何度剣を振っても避ける。この動作を何回も行い、1人が疲れてきたところで、その背後をとり、首を掴み、そのままへし折る。何かが砕ける音と共に結晶が辺りを散る。


(さて、あと2人かな?余裕じゃわい。はあ、腹減ってきたしさっさと帰るかのう)


その後、彼が2人を殺すのにはそう時間はかからなかった。








〖〗

「ふうー、たまには外食もいいもんじゃのー。この装備のおかげでなんか自然っぽいしなあ」


彼の名は村人A。今この世界を少しづつ崩壊させている者だ。彼は以前まではプレイヤーキラーとして指名手配されており、簡単に外に出る訳にはいかなかったが、この装備、[忍者服]を手に入れてからは別である。他人から見ればそれは忍であり、顔を隠していても不自然ではないだろう。ただ、今の彼の姿は忍の格好をしていて、食事を何故か、口の部分だけを解放していて顔は布で覆いながら食べるという完全にやばい奴だろう。まあ、Aは気にしていないが。しばらくたって、


「美味かった…。前は兎肉を食ったから今日は主にサラダを食ったが、サラダもいけるな。ふう。飯も食ったしそろそろ行くか」


とご満悦のようだ。Aが店を出る。店を出たときには顔は隠してある。さてと、とAは考える。


(この街でする事もうないよなあ。十分勇者は倒したしなあ。せいぜい残ったスキルを取りに行くくらいか)


今のAのレベルは16と、第3の街の時点では中々のレベルである。第4の街へ行くには十分と言えるだろう。


(とりあえず行くかのう)


Aは残ったスキルを取りに行くために街や森を駆け巡るのであった。








〖〗

「ふー。これでこの辺りのやつは全部取ったかの?…………。うむ。これで万事OKじゃい」


Aの今時点でのスキル数はかなりのもので、大抵はどんなことが起きてもなんとか機転をきかせることができれば大丈夫だろう。てかもうスキル欄の場所がうまりそうなんだが、幸いにもスキル自体は所持できる数は決まっていないので問題ない。まず、第3の街の時点でうまるということがまずありえないのだが。


「よっしゃ!次の街や。肉体強化&加速でとばしてやるわい!」


Aはこの2つのスキルを使い、第4の街へと向かおうとしたのだが、


「おい!まてい!」


声が後ろから聞こえ、Aは振り向く。そしてその正体はモンスターだった。


「なんだ、モンスターか…」


「なんだとはなんだ!ただのモンスターじゃない!魔王直々に部下を通して遠隔通話してるのだぞ!」


あ、魔王とかそんな奴いたわ。勇者ばかりに気を取られてたから完全に忘れてたわ。魔王も倒す対象なんだよなぁー。


「なんで魔王ともあろう方がわざわざわしなんかと会話するんや。なんか要件があるならさっさと言ってくれや。わしは次の街へ行きたいんじゃ」


そんな態度のAに声を荒らげ、


「お前が悪いんだぞ!お前がこの世界にいることでゲームとして色々と壊れてるんだぞ!てなわけで世界を支配する魔王としては世界を脅かすお前を許さん!これからは私の部下がお前をどんな簡単なフィールドだろうが襲いに行くだろう!せいぜい足の裏洗って待ってやがれ!以上!」


「ふう。話は終わったか。んじゃこいつは殺すわ」


魔王の通信が途切れ、はっ!と意識を取り戻すモンスター。だが、その目の前には刀を持ったA。


(あっ…(察し)


「ばいばい」


「うわああああ!!」


モンスターは悲鳴を叫びながら光の結晶へと変わっていくのだった。しばらくしてAは今の現状を把握する。


(やべぇよ…やべぇよ…。なんかあいつ簡単なフィールドだろうが部下を差し向けるみたいなこと言ってなかった?つまりいきなりやばい奴と会うかもしれないってことか?まじで困るんじゃが…。まあ、なんとかなるか。最悪逃げるわ。とりあえず第4の街へ行くか」








〖〗

「着いた、ここが第4の街か。まず宿はとっておくか。んでその後はスキル集めとレベル上げじゃな。やるべき事はやって、その後はしっかり休む!よし!行くか」


十分ほど歩き、宿に着く。宿に予約を入れ、ひたすら街付近のスキルを取りまくった。第4の街ともなると、スキルは少し強くなってくる。中々役に立ちそうなスキルばかりだ。レベル上げも兼ねて、森の中でモンスターを相手にしてスキルを使ってみて実感した。


「スキルがこれだけあると、どんな奴が来ても大丈夫じゃい。さて、もう今日はいいわ。帰るか」


Aが帰ろうと思ったその時、背後から何かが飛んでくる気配を感じた。


「何やつ!」


横へのステップで何かを避ける。それは、弓だった。


「ほう。避けるとは中々だな。お前が村人Aか。魔王様の命令により、貴様をここで倒させてもらう!」


木の後ろから何者かが現れる。そいつは弓を持っている騎士のようだった。明らかにこの辺のモンスターより強いと感じる。まず、ここまで人型のモンスターを見たことがなかった。


(マジかよ……。めっちゃ強そうじゃん…。やばいわ。よっしゃ逃げるか)


今のAの力では勝つことは極めて困難だ。なら逃げるのが最善策、街まで逃げて勇者共に袋叩きにしてもらう。ただ、それでも勝てるか分からないが。Aは肉体強化と加速、そして新スキル[風の盾]を発動。[風の盾]は自身が風をまとうことで一定の攻撃から身を守ることのできる魔法使いのスキルである。Aはその場から全力で走った。しばらく走ると、ナイトの姿が見えなくなった。


(撒いたか?)


Aが気を緩めた瞬間、首もとに矢が飛んできた。矢は風により首に届くことはなかったが、風は消えてしまった。


「逃げられるとでも思ったか?残念だが見えているぞ。さあ、戦おうか」


ナイトが弓をしまい、剣を取り出す。


(あいつ、弓だけじゃなく、剣も使えるのか。しかも追いつくとかやばい奴じゃん。やっべ、勝てる気がしないわ)


とりあえず、刀を抜く。そして、ナイトがこちらに向かってくる。剣を振りかざし、それをAが刀で受け止める。今、こうして戦いが始まるのだった。




















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る