第5話 わし、レベル違いの敵と戦う

刀と剣がぶつかり合い、金属の音を鳴らす。そこにいるのは、忍者服をきた村人A。そしてモンスターであり、Aを倒しにきたナイト。彼らは今、命を賭けた戦いをしているのだ。ナイトは剣で刀ごとAを潰しにくる。


(力強!?やべぇ、斬られる!?)


「くそ!くらえや![酢、精製]!」


Aは酢をナイトのヘルムの中に精製する。[酢、精製]は薬剤師が使用できるスキルである。酢主に回復薬などに使用できるが、このような邪道な使い道がある。(思いついたのは多分Aが初)


「うわああああ!目が!目が痛いぃー!」


ナイトがヘルムを捨て、目を押さえる。ヘルムを捨てたため、ナイトの顔が現れる。人間のような顔だった。モンスターということもあり、勇者やNPCと違い、肌は黒かった。ナイトは呻いている。その隙を逃さず、


「ざまぁねえや!くたばれい![3連斬り]!」


Aはナイトにむかって斬りかかる。


「卑怯なヤツめ!クソ!」


ナイトは辛うじて避けきる。まだ片目を擦っていることから、まだ目にしみているらしい。Aの猛攻は止まない。ひたすら攻撃して相手に攻撃の隙を与えない。


「オラァ!」


「グハァ!!」


Aの攻撃がナイトに命中し、鎧からは赤いエフェクトが出ている。ナイトは呻きながら後ろへと下がる。


「逃がさん![発火]!]


「ぐぉぉぉ!」


ナイトの顔で火が燃える。熱さにより、剣を振り回しながら呻く。いくら強いモンスターといってもさすがに顔は守ることはできない。


「やったか!?」


Aが顔を押さえるナイトを見ながら呟く。


「[流水]!]


ナイトが途端にスキルを発動する。[流水]は水を発生させるという力がある。それにより、


「よくもやってくれたなぁ?もうその手は効かんぞ」


火は消えさり、酢まで落とされ、元の状態に戻ってしまった。


「今度は貴様の番だ!」


ナイトがAに向かって斬りかかる。刀で剣を止めようとするが、間に合わない。剣はAを切り裂く。


「ウッ!」


体勢を少しずらし、急所はずらしたものの、腹からは赤いエフェクトが多くでている。Aは地面に膝をつく。ナイトが剣を振りかざす。


「じゃあな、村人Aよ」


Aには剣がゆっくりに見えた。これが走馬灯か…。ゲームなんだがな。いや、わしはこの世界の住人だからか。Aは死を覚悟した。Aはプレイヤーであってプレイヤーではない。この世界で死んだら消滅。つまり実際の死である。いや、まだ諦めるな。わしにはやることがある。一瞬で考えろ。


(まずはこの危機を回避!)


Aはクナイを取り出し、投擲。それはナイトの顔を目掛けて飛んでいく。


「くっ!」


ナイトがクナイを避けたために、剣が当たらず、かする程度に収まった。


(ここで攻めきらなきゃ勝てない!)


「[風の盾]![治癒]!」


スキル[治癒]により、体力を回復させ、さらに風の盾を自身に纏う。


「どぉりゃァァァ!!!」


「来い!迎え撃ってやる!」


ナイトは剣を握り、隠れていた2本目を持ち、


「[5連斬り]!」


(5連斬りじゃと!?さすがに凄いな。だが、止まるわけにはいかん!)


「[3連斬り]!」


1連目。ナイトの剣がAの腹を斬りさこうとするが、風により阻まれる。風は消えてしまった。Aの刀がナイトの右腕を斬り飛ばす。だが、残った左手がある。2人が交差し、2連目。ナイトの剣がAの腹を再び狙い今度は風の盾が無いため、切り裂く。Aの刀がナイトの左腕を斬り飛ばす。


(ぐっ!止まるな!行くんだ!)


「うおおおおぉ!これで終わらせる!」


3連目。Aの刀がナイトの鎧を穿き、赤いエフェクトを撒き散らせる。


「ぐぉぉぉ!!!」


ナイトは地面に倒れる。もう両腕はなく、もう息絶える寸前だ。


「はぁはぁ……。終わった…か…。はぁはぁ……。[治癒]……」


Aも腹を切り裂かれた時にはもう死ぬ寸前だった。それでも何とか意識を保ち、ナイトを倒すことに成功したのだ。


「結構やるじゃねえか………。だが、この俺にこんな手こずるようじゃ……この先キツイぜ?」


ナイトが喋る。まだ生きている。そこでAは聞きたいことがあった。


「おい…。聞きたいことがある……。お前はモンスターだ。何故そんなにも明確な意思がある……。意思を持つモンスターなどここまで見たことがなかった……」


「そんな質問か……。それくらいならいいだろう。答えてやる。俺は……向こう側の世界の人間。つまり、運営サイドさ……。俺だけじゃない…。この世界の終盤へ向かうにつれて、ほとんどのモンスターは運営だ。意思があるからスキルが使えるというのもある…。まず普通のモンスターでは使えない…」


どうやらこの男が話していることは本当のようだ。それならあそこまでの戦いが出来るのも納得だ。


「そうか……。お前はわしのような人口知能ではなかったか…。少し期待していたというのもあったのだがな…。敵同士でも1人ぐらいは同じ仲間がいると信じたかった…」


「お前、中々甘いな…。おっと、俺はここまでだ。ナイトは数量限定のモンスターだからな。もう会うことはないだろう…。せいぜい頑張りな…」


そしてナイトは光の結晶となって消えていった。よく見ると、ナイトがいた場所には一つの刀が落ちていた。


「[血塊けっかいの双刀]か…。ランダムにアイテムを落とすといっても刀を落とすとはな…。お前も甘いじゃないか」


これからはこんな奴らが次々と来るのか…。わしはこの先も上手くいくのか?………。考えても仕方がない。


「………。帰るか」


Aは街へ戻るのであった。















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