悪意だらけのお茶会
プロローグ
ーーガンッ!!ーー
広い厨房で、激しい音が響きました。作りの違う厨房は勝手がわからず、色々と苦労いたしました。
私の掌の下では、人を見下し醜態を晒した愚かな侍女が、厨房のコンロに頭を打ち付けられ痛みにのたうち回っております。
コンロの五徳で額を切ったのか血を流し、必死に体勢を戻そうと手を付き立ち上がろうとしております。無駄なことです。どんなことをしようが、私の手からは逃れられません。
厨房の端の方では、事を見守る…いえ、怯えてみていることしかできない、色の違う侍女服をまとった女たちが私たちへと目を向けていました。誰も、眼下の女を助けようともしません。
「わ、私はなにもしてないわよっ、言われた通りに仕事してるだけよ!何で私がこんな目にっ」
聞くに堪えない雑音が響き渡り、顔をしかめたくなります。あぁ、馬鹿なものほどよく喋る。不愉快でなりません。動かない頭で、必死に目だけを私に向けて睨み付けています。まるで被害者のような言動に、吐き気すら覚えます。
「何もしていない?そうですね、直接手は下していらっしゃいませんね。」
込み上げてくる怒りに我を忘れそうで、冷静に努めているつもりですのに、声が震えます。でも、どうしようもないのです。どす黒い感情が、すぐにでも私を乗っ取ってしまいそうでなりません。これ以上、聞くに堪えないこの女の声を耳にしてしまったら、うっかりコンロに火を、つけてしまいそう。
「貴方達の幼稚な策など、私には通用しません。他人を陥れ、蔑む事しか考えていない愚か者ども…恐れおおくも、貴方達は…お嬢様を殺そうとしたっ!!」
殺意に燃え上がった私の声が、ただ厨房に木霊しました。
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