管理人

「では紹介する」と堂場顧問。「天海島校舎の管理人を務めていらっしゃる、尾形正夫さんだ」


「尾形です。どうぞよろしく」


 校舎の管理人尾形さんはピシッとしたスーツを着た少し年配の人だ。丸メガネがインテリ感を醸し出し、ほんの少しだけどちょい悪感も滲み出る。


「みなさん、遠路はるばる、ようこそ天海島へ」と尾形さん。やはり慣れているのか、言葉の間隔が絶妙で落ち着きを感じさせる。「今回の合宿はダンスの練習だそうですね。皆さんが伸び伸び練習できるよう、サポートして参ります。ぜひ、素晴らしいパフォーマンスを見せてください。体育祭は私も楽しみにしています。まだ学校の名前が杵憩学園だった頃、私も皆さんと同じように部活動に汗を流していました。当時の思い出が蘇るようであります。是非、いい思い出をつくって下さい……」


 なんと、尾形さんは俺たちの大先輩に当たる人だった。粗相がないように注意しよう。その時、彼の目がすうと流れ、ある人物に向けられた。


「特に奇抜なTシャツの君と……」


『I HAVE A DREAM』先輩があはははと照れ笑い。何故褒められていると感じたのかは不明。彼の生態は未だベールに包まれているので是非情報が欲しいところ。尾形さんの言葉を受けて全員が彼のTシャツを覗き込む。


「前髪が長い君」


 東村がいきなりの指名で背筋をピシッと伸ばす。


 前髪をいじりながら軽く会釈している。前髪が長いのは断トツで深川だと思うけど、何故東村を指名したのかは不明。少々謎な感性の持ち主なのかも(早速粗相発言)。


 こうして開会式は終了した。この後は夕方まで部活ならびにダンス練だ。今日のメニューは堂場顧問からもらっているから早速校庭に出て練習だ。


「よし、みんな校庭に移動!」


 はーいと我が陸上部員が答える。


 館内では早速バレー部がネット張りを始めていた。


 ウォーミングアップで校庭をぐるりと回る。初めは歩き。深川と平田先輩はこの間、バトンの練習。深川が渡して先輩が受ける……それを何度も繰り返す。


『腰を曲げすぎなんだよ』


『はい……』


『お前のオープントスは筋がいいが、それだけじゃ攻撃がパターン化するだろ? もう少し二人みたいにバックトスもできてもらわなくては困る』


『はい……』


 体育館前を通るとバレー部の練習風景が見える。新城がトスについて寺坂顧問から指摘を受けている。セッター三人衆、そのレギュラー争いが勃発中らしい。朝倉大丈夫かなと思いながら、軽く走り出した。

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