バレーボール部選抜六人
我が陸上部の自己紹介。まずは俺。次に深川、平田先輩、岡本、国枝さんと続いて。
「…………よろしくね!」と森川さんが赤縁メガネをくいっと。クイーンスマイル炸裂。
そして。
バレー部の自己紹介が始まった。
「えっと、
「うちの部じゃあ……」とポニーテールの女の子。「セッター三人衆って呼ばれてるんだよね?」
朝倉は言葉に詰まり曖昧に返事をするのみ。クラスでもこんな感じだ。人見知りなのは俺も同じ。何だかんだ言いつつ、深川みたいな陽気さを身につけたいと思っている。
「三人衆ってことは……」とすかさず平田先輩。「あと二人いるの?」
「いますよ! 今この場に、三人衆全員が集結! ぱちぱち」
ポニーテールの女の子の言葉を受けて、残りの二人が前に出る。内一人はバレー部にしては長い前髪が印象的だ。先輩と深川に思わぬライバル出現。
「あ、俺です。えー
前髪がひらひらとまではいかないが、深川と平田先輩に迫る勢いを感じさせる。リスペクトするある種の魅力があるんだろうか。俺には全くわからない。彼に一声かけられて残りの一人も自己紹介。
「
真面目な言葉が飛び出したので、どんな奴かと顔を見たらなんとオールバック。いかつい印象を相手に与えかねないその顔に岡本に勝るとも劣らない汗。国枝さんとポニーテールの女の子と一緒のクラスTシャツが既に絞れそうだ。
セッター三人衆の紹介が終わり、残り三人となった。
「えっと、
頼れるエースアタッカーだよ、とポニーテールの女の子。無回転だけど……とぼそり。
「ちょっと瑠香ぁ! ひどい! 気にしてるのに」と上巣さん。ショートヘアを後ろで結っているそれは何テールだろうか。森川さんが目を細めて上巣さんを見ている。
「一年生です……」
自己紹介は進行していて。俺はそちらに注目する。
「
初々しく自己紹介した佐々木さん。身長は女の子らしいがバレーボーラ―としてみると低い。これでもバレー部のアタッカーなのだから、凄まじい身体能力をもっているんだろう。国枝さんや上巣さんよりも短めに切り揃えられたショートヘアが似合っている。
「最後は私か……。えっと、
頼れるエースマネだよ、と上巣さん。特にラインジャッジの速さが……とぼそり。
「沙耶ぁー言ったな! 次から沙耶のスパイク全部アウトにするからね!」
そんな冗談を言い合い、笑いが起きるバレー部面々。仲の良さが伺える。
辻さんがマネさんとは驚いた。小柄だからてっきりリベロかと思ったのだ。
リベロとは守備専門の選手のこと。常に後衛でレシーブなどを担当する影の立役者。
そんな自己紹介が終わって聞こえる海鳥の鳴き声は、ほんの少しだけ心地良い。
遥か先に見える絶海の孤島。
本格探偵小説ならこの後嵐がやってきて――。
「あれ、そーいえば寺坂先生は?」
国枝さんが辻さんに質問する。寺坂先生はバレー部の顧問だ。朝倉曰く、血も涙もない軍人のような顧問らしい。
「えーと」辻さんが船室に続く扉を見つめて。「まだ部屋にいるんじゃ……」
がちゃり。と、その時。船室に続く扉が開いて……。
「…………」
雑談をしていたバレー部はもちろん、我ら陸上部の面々もその場に凍り付く。この威圧感は、あっちの柵にもたれて慈善活動をしている元ハードルクラッシャーにはないものだ。威圧感どころか、教師としての威厳も感じられないが。
そして姿を現したもの。
「…………」無言。だが伝わってくる。圧倒的なオーラ。
それはバレー部の主なる存在の降臨――そこで疑問が浮かぶ。顔色が良くない気が――。
「うううううううううううううううううううおええええ!」
結局。現地に着くまでに慈善活動をした者は、たった三名。
堂場仁。
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