報告書64「人為災害、この腐り切った世の中に警鐘を鳴らすことについて」
文字通り死ぬ気でドレイクを倒したその直後に知らされた、イクノさんが得たというリーク情報。それは想像だにしない内容であった。
「つまり、このリソーサーの大発生は全部BH社と資源庁が仕組んだ事だって言うんですか!?」
<<そう言う事じゃ……わしも情報提供者からその話を聞いた時は耳を疑ったもんじゃが、ウラも取れたし確かのようじゃ……>>
「特別チームが地下へと突入した所で各駅ダンジョンに設置したエクスなんとかを起動、地下に潜んでいるリソーサーを刺激して大発生させ、特別チームと自衛軍を壊滅させる……そして作戦が失敗した国防省は発言権が低下し、資源庁がこのリソーサー利権を独り占めにできる、ね……随分とイカれた事を考えたものじゃない」
<<エクスカベーターじゃ。おまけにこの件に噛んでいるのはBH社だけでは無いのじゃ。今回コード9が発令され、全スペキュレイターが緊急招集されたにも関わらず、集まったのがわしらほんの一握りなのも、他の主要企業にはBH社から根回しされていたからのようなのじゃ>>
「国防省亡き後の資源庁主導の権益分配に与ろうって魂胆なのか。ふざけやがって……!」
千葉駅ダンジョンや池袋駅ダンジョンで見かけた、BH社実行部隊の不審な行動も恐らくはこの作戦の下準備、エクスカベーターの設置をしていたと聞けば納得がいく。リソーサーという人類、いや既存の生物共通の敵を目の前に、権力争いのために足の引っ張り合いまでやらかすとは、BH社に資源庁どこまで汚い奴らなんだ!
「そんな話があるのに、なんで自衛軍は動かないのよ?資源庁とBH社をとっ捕まえてエクスなんとかを停止させれば解決でしょ」
<<それが……どうやらBH社への天下りを見返りに、何人かの国防省高官は既に買収されているようなのじゃ……>>
腐ってやがる……BH社も他の主要企業も資源庁もそして国防省すらも。この世の中全てが腐ってやがる。こんな下らないパワーエリート達の利権争いのために、ササヤさんや自衛軍兵士、それにエキチカに住む人達は死ななければならないのか!?……そんな事あってたまるか!
「チトセ、イクノさん、俺達でやろう!俺達でエクスカベーターを止めて、ササヤさんやみんなを救うんだ!」
<<……そう言うと思って色々と調べておいたんじゃが……これから相手にしようとしているのは、リソーサーなんかよりもずっと強大で闇が深い存在。生きて帰って来れる保証なんて全く無いのじゃぞ……それでもやるのかの……?>>
「野暮な質問ねイクノ。目的のためには命だって投機する。それが私達スペキュレイター……山師ってもんじゃない!」
チトセの一言で俺たちの決意は固まった。隊長さんや大佐にもこの話をしたが、案の定、この隔壁からリソーサーを出さないようにするのに精一杯で、戦力を割く事はできないそうだ。だがそんな苦しい状況にも関わらず、損傷著しい機動鎧甲や装備の修復に、物資の補給まで惜しみなくしてくれたのだから今は感謝するべきだろう。
「さぁてお腹もいっぱい、装備もピカピカ!準備完了よ!それでイクノ!そのエスカレーターとかいう装置、どうすれば止められるの!?」
<<エクスカベーターじゃ。各駅ダンジョンに設置されているのを個別に破壊するのは難しいじゃろう。なんと言っても数が多いし、リソーサーも大発生してるからの……となると……>>
「となると……?」
<<大元の制御装置から停止信号を送るしかないかの……それなら一斉に全ての装置を停止できるからの>>
「なるほど、それでその制御装置はどこにあるんですか?」
<<……BH社の本社ビルの中じゃ……>>
かつてを過ごした、昔懐かしくもなんともない、正直言って苦い思い出しか無いBH社の本社ビル。そこにまさかまた行くことになるとは。
「なるほど、それじゃ決まりね。BH社の本社ビルに殴り込みを掛けて、制御装置をぶっ壊す。面白くなってきたじゃない!」
<<簡単に言うがの……本社には警備部隊はもちろん汚れ仕事専門の実行部隊も展開しとるんじゃぞ>>
「昔とった杵柄、BH社本社ビルの構造にセキュリティは俺に任せてくれ。なぁにあんなクソ会社、一発で粉々にしてやるぜ」
「その意気よ。それじゃあ出発!」
話はまとまった。隔壁の外に急いで戻り、止めてあったコーギー号に武器弾薬を満載したコンテナを積み込み乗車。イクノさんの運転でBH社本社ビルを目指す。相手は軍事資源回収企業最大手であるBH社、有する戦力は軍隊並み。対するは新興企業のMM社、現有戦力は社員3名のみ。絶望的な戦力差だが、不思議と恐怖は無かった。遂に本懐を遂げられる時が来たんだ。
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