第2話
あれから数年経って。
「なにか」の感覚はもうなくなってしまった。
「なにか」がなくなったのではなく、私が「なにか」を求めなくなったのだ。
そんなことを気にすることができるほど今の生活は暇じゃない。
来年も今と同じ生活をできている保証がないのだから。
「なにか」はわたしに余裕があるときしか出てきてくれないのだろう。
それは怖がりな私にとって安心する事実であり、同時にがっかりもした。
持論ではあるが、怖がりな人はそういったものを人一倍好むのではないだろうか。好きの反対は無関心、といったように。
まあ、いつかあの「なにか」が来てくれればそれでいい。そのときはわたしの心に余裕がある証明にもなるだろう。
いや……やっぱり怖いものは怖いな。
見えないままで不思議な現象が起こるくらいが一番丁度いい。それも電気が勝手に点くくらいの軽めのもので。
それ以上になると……目も当てられない。
そういえば、海外旅行に行った時に電球がショートしたり電気が点滅したりといったことがあった。その時は慣れない土地ということもあって本当に怖かったが、少し、25メートルプールにこぼしたほんの一滴くらい、嬉しかった記憶がある。
でもそんなことを言っていたら余計なものまで来てしまいそうだ。
やはり怖いものは何もないほうがいい。
悪霊退散。
靄 スズラン @kinsenka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。靄の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます