第2話

あれから数年経って。

「なにか」の感覚はもうなくなってしまった。

「なにか」がなくなったのではなく、私が「なにか」を求めなくなったのだ。

そんなことを気にすることができるほど今の生活は暇じゃない。

来年も今と同じ生活をできている保証がないのだから。


「なにか」はわたしに余裕があるときしか出てきてくれないのだろう。

それは怖がりな私にとって安心する事実であり、同時にがっかりもした。

持論ではあるが、怖がりな人はそういったものを人一倍好むのではないだろうか。好きの反対は無関心、といったように。


まあ、いつかあの「なにか」が来てくれればそれでいい。そのときはわたしの心に余裕がある証明にもなるだろう。

いや……やっぱり怖いものは怖いな。

見えないままで不思議な現象が起こるくらいが一番丁度いい。それも電気が勝手に点くくらいの軽めのもので。

それ以上になると……目も当てられない。

そういえば、海外旅行に行った時に電球がショートしたり電気が点滅したりといったことがあった。その時は慣れない土地ということもあって本当に怖かったが、少し、25メートルプールにこぼしたほんの一滴くらい、嬉しかった記憶がある。


でもそんなことを言っていたら余計なものまで来てしまいそうだ。

やはり怖いものは何もないほうがいい。

悪霊退散。

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スズラン @kinsenka

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