小さな子ネコと大きな子イヌ
冬のある日、ショータは学校から帰るなりぼくに言った。
「ユウトが犬を飼い始めたんだって」
「にゃあ?」
犬? と聞き返したぼくに、ショータは「うん、子犬だよ」と返してくる。
ユウトというのは近所に住むショータの幼馴染みで、ぼくも何度かお家にお邪魔したことがあった。
その子も動物好きなのだけど、妹がまだ幼いからと犬やネコを飼うのをずっと我慢していたのだ。
だから、代わりにぼくが出張に駆り出されていた、というわけ。
嫌々ではないよ? あそこの家族もみんな優しいし、行くと好物の煮干しをくれるからね。
そんな一家が、とうとう子犬をお迎えしたらしい。
「名前はコテツだって。今度見せて貰うんだ。楽しみだなぁ」
◇◇◇
そんな話を聞いたら凄く気になってしまう。ぼくは翌日、早速ユウトのお家に遊びに行ってみることにした。
すぐ近くに建つこぢんまりとした一軒家で、さっぱりとしたお庭もあって日向ぼっこには最適なんだ。
いきなり二匹で押しかけると子犬がビックリするかもしれないと思い、今回はぼくだけでお邪魔することにした。
お庭から回り込み、窓ガラスを爪でカリカリ引っかく。すると、早速ウワサの子犬が飛んできた。ぼくより少し大きくて、ぼくやユキ、リンとも違う毛色だね。
くりくりの目で一心にぼくを見つめながら、シッポをふりふり、キャンキャン吠えている。
「まぁ、いらっしゃい」
そのうち、子犬――コテツの大興奮に気付いた家族がやってきて、ぼくを見付けて中に招き入れてくれた。
すんすん……あたたかい部屋のあちこちに子犬特有の柔らかい匂いがしている。
「コテツ。この子はネコのナオちゃんって言うのよ?」
お母さんに抱っこされたコテツは吠えるのを止めたものの、ぼくに興味津々らしくて今にもロケットみたいに飛び出してきそうに見えた。
そしてとっても勢いよく匂いを
「にゃあ」
「わんっ!」
ご近所さんとしてこれからよろしく。今度はユキやリンも連れてくるね。
そんなふうに、今日もいつもみたいに煮干しを貰って、楽しい気持ちでぼくは帰宅した。
◇◇◇
「ナオ、ひどいよー!」
先に挨拶に行ってしまったことをショータに悔しがられるのは、翌日のお話。
◇後書き
別作品の詩集で書いたお話を、ナオ視点で改めて書いてみました。
背景などが書けて楽しかったです。
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