ひまわり
「わーっ、凄い凄い!」
「うんうん、やっぱり夏といえばこれだよねー!」
ショータが大興奮し、ルカもスマホでパシャパシャと目の前の光景を撮影する。
視界を埋め尽くすのは、空に向かって大きく花弁を開くひまわりの黄色と葉の緑の鮮やかなコントラストだ。
もちろんぼく――ネコのナオも一緒にだ。念のためにと赤いリードを付けた状態でママさんの腕の中におさめられている。
ジワジワと合唱する
けれど、ママさんが白くて可愛らしい日傘を差しかけてくれているし、高度が高いらしく畑には気持ちの良い風が吹き抜けていた。
ひまわり達もさわさわと楽しそうに揺れ合っていて、まるで仲良く歌っているみたいだ。その様子はいつだったかに流行した、音に反応して動くオモチャを思い出す。
「壮観だなぁ」
はしゃぎながら先を行く子ども達をゆっくりとした足取りで追いながら、隣を歩くタカヤが言った。
もう38歳になるんだっけ。こうしてみると、随分と大きくなったなぁ。
昔は今のショータみたいに小さくて、いっつもチョロチョロしては親に叱られていたのに。時間って本当にあっという間でフシギだ。
もしぼくが人間の言葉を話せたら、子ども達にタカヤ少年の失敗談を目いっぱい聞かせて楽しむと思うよ。
出かけた先で迷子になって泣きべそをかいていたこととか、ラムネを開けるのに手間取って全部
ずうっと
「そうね。来て良かったわ」
ママさんが頷いて、ぼくの頭を優しく
窮屈だから本当は地面におろして欲しかったけど、他にも観光客が居るから文句は言えない。
特にちびっ子は仔猫を見ると目の色を変えて突進してくるから
「ほら、ナオ。綺麗ね」
大人の背丈くらいはあるひまわりのうちの一本に近付いて、ママさんが話しかけてくる。ぼくは前足をにゅっと出して花に触ろうとして、
「クシュッ」
くしゃみをしてしまった。なんだろう、花粉でも吸い込んだのか鼻がムズムズする。……っくしゅ!
「あらあら。ナオ、大丈夫?」
「にゃう……」
鼻先をごしごしと擦っていたら、今度は一匹のトンボが目の前をスーッと横切った。
ルカはしばらくそれを画像におさめようと
スマホを向けてニコリと笑う。
「ナオー、こっちこっち! カメラ目線よろしく!」
見上げれば空には入道雲がもくもくとわき上がっていた。
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