ぼくと家族

 ぼくはナオ。ペット可のマンションで飼われているネコだ。

 ……といっても、普通のネコとはちょっと違う。

 他のネコよりずっと長生きだし、他にも色々と出来ることがある。


 どうやら、ぼくみたいなネコは人間の言葉では「化け猫」と言うらしい。

 自分が何故「化け猫」になったのかは分からない。気が付いた時には既にこうだったから。


「ナオー」

「にゃあ」


 家族が呼ぶので、ぼくは定位置の一つであるリビングの隅っこから返事をする。

 ここには隠れられるカーテンもあるし、床にはカーペットも敷いてあって居心地が良いのだ。


 ぼくはもうずっとこの家、いや、この人間の一族に飼われている。

 もうぼんやりとしか思い出せないくらい昔に、一家の先祖に足を怪我しているところを助けられて以来、ついつい居ついてしまったのだ。


 ずーっと生きているネコなんて気味悪がられてもおかしくないのに、そういう家系なのか、子孫も当たり前のように面倒を見てくれる。

 生まれた時から傍にいるから、抵抗がないのかもしれない。


「うーん、うーん」


 ぼくは気まぐれな性格だけど、エサを貰った分の礼くらいはする。

 昔に助けてくれた人間が付けた「ナオ」という名前を呼ばれれば返事をするし、気が向けば子どもの相手だってする。


「……にゃ」

「え、これ? じゃあこの問題は……やった、解けた! ナオありがとう、やっぱり頼りになる!!」


 今日も宿題を手伝った。この茶色がかった黒髪の女の子――ルカは数学が苦手でしょっちゅう教科書やノートの前でうなっているのだ。


 ぼくはと言えば、今まで何人もの子どもの勉強を見てきたから、すっかり覚えてしまった。


 それにしても、毎日こんな面倒なことをしないといけないなんて、人間は大変だなぁ。ま、手伝いをするとおやつに好物の煮干しが貰えるから良いけどね。


 ペロリと口の周りを舐めて、今度は定位置の一つである窓際に飛び乗る。そこは陽気がぽかぽかと当たっていてなんとも暖かい。


 そうして体をまるめてぬくぬくと温もりながら、午後の微睡まどろみを楽しむのだった。

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